【美浜町-内海トンネル】
知多半島の山の中に眠る謎のトンネル。
いつ、誰が、何の目的で造ったのか? 気になるうわさもある、トンネルをレポートします。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 今回は謎のトンネル。
 謎ってのがそそります。
 存在は知っていれど、場所がわからない。
 にぎやかなレジャースポットの近くにあって、
 取り残されてしまった哀愁が漂います。
 トンネルとしては死に体となった、
 謎トンネルの謎は解明されるのか?
 謎トンネル周辺図はこちら→■周辺図■

 国道247号線を南下して来て、
 美浜町の小野浦の信号交差点を左折。
 すぐ右側の道に入り、
 小野浦バンガロー村に向かって
 細い道を上がって行きます。
 バンガロー村を過ぎてさらに進むと
 写真の分かれ道に出ます。
 まっすぐに行くと、旅館・望水荘に、
 左に行くと、旧道の峠に出ます。
 一見すると、
 トンネルなんて有りそうに見えませんが、
 分かれ道に立って、右を向くと…
 
 目の前にこの景色が。
 なんだ、簡単に見つかっちゃった。
 ちょっと興醒め?
 なんて言ってますが、
 実は一度見過ごして
 旧道の方に行ってしまいました。
 それはそれで思わぬ発見があったのですが…
 特徴的な坑門の姿です。
 これは扇? 扇のデザインなの?
 初めて見ます、こんなトンネル。
 トンネルの前には小さなスペースがあります。
 山削ったみたいです。
 
 扁額のアップを写してみました。
 文字が右から書かれています。
 サイズ的に、車が通るには小さいようです。
 歩道トンネルとか、そういう物でしょう。
 でも何でしょう?
 変わったデザインですが、
 何となく安っぽいような感じがします。
 今まで見て来た隧道なんかは、
 かなり古い物でもしっかり造ってあるのに、
 これは、単純なコンクリート造りです。
 これって規格外品?
 ちなみに、「うつみ」と読みます。蛇足ね。
 
 中はコンクリート吹き付けとなっております。
 って崩れちゃっているよ!
 コンクリートも心無しか薄くて、
 ぽろぽろ崩れちゃってますね。
 ここの地質はもろいです。
 なのにこの薄さ。
 コスト掛けなさすぎ。
 下には大量の土砂が積もっています。
 こんな状態でも立ち入り禁止じゃありません。
 地元のPTAの看板が倒れてました。
 小学生は入っちゃダメ!
 もちろん、
 その他の人も入っちゃダメ!
 

 内部を撮ってみました。
 デジカメのバッテリーをけちるために
 フラッシュなしで撮ったので、
 明るい部分がとんで
 変な写真になってしまいました。
 洞窟の写真に見えますが、トンネルの中です。
 それにしてもすごいです。
 元の倍ぐらいの広さになってます。
 でもその分、土砂が床に積もっているので、
 結局あまり変わらないかも?
 写真が傾いているように見えますが、
 これは、地層が斜めに傾いているためです。
 天井が地層の向きに沿って剥がれているのが
 確認できます。

 
 これは1枚目の写真を撮った場所です。
 ちょうどここの部分の延長線上が、
 トンネルの崩れた天井あたりになるみたいです。
 この辺りの地質は砂岩や火山灰が主で、
 硬い砂岩層と崩れやすいシルト層が
 交互に堆積しています。
 硬いといっても風化して簡単に崩れます。
 そもそも、こんな地質の所に
 トンネルを掘る事自体無謀です。
 無謀な上に安っぽい造りなので、
 トンネル内部をささえきれません。
 コンクリートが剥がれたため、
 むき出しになった岩盤は風化が進行し、
 あんなひどい状態になったのでしょう。
 
 頭上に注意しながらトンネル内を歩き
 反対側に出ました。20mぐらいしかなかったです。
 2枚上の写真を見てもらえばわかるけど、
 出口が見えません。
 土砂が2m近く積もっていて、反対側の坑口を
 隠しているからです。
 なので、外に出るには土砂の上を越えて行きます。
 こまかく砕けた物ばかりだから、ジャリの様です。
 でもこちら側ばかりに積もっているのって
 何か不自然な感じがします。
 落石を出口付近に集めて塞ごうとした?
 坑口の中から外を見たところです。
 ここも広場になっていますが、
 そのむこうは崖になっています。
 
 外側から見ると、トンネルの口から
 土が吐き出されているみたいです。
 げろってか?

 坑門の大きさは向こうより小さいです。
 扁額はありません。
 まさに裏口って雰囲気。
 左側の形が変わってますが、崖が崩れた時に
 一緒に崩れてしまったようです。
 内から外から壊れて行きます。
 
 出口から出た所から人が歩いた踏み跡が…
 かつて歩道が延びていた跡です。
 思った通り、
 歩行者のためのトンネルでしたね。
 ここから海岸まで降りて行ったのでしょう。
 観光客のためのトンネルかしら?
 だとしたら、あの変わったデザインも納得?
 何か遊園地のアトラクションのゲートみたい。
 行った事ないけど。
 歩道はまだ続いてるけど、
 トンネル側の探索はここまで。
 次は海岸の方に廻ってみます。
 
 さっきの歩道を降りて行くと、
 こんな所に出ます。
 お吉ヶ浜という海岸があります。
 今はここに、国道247号線が通っていて、
 夏は海水浴客でにぎわっています。
 昔はあの山の向こう側を通っていました。
 いわゆる旧道ね。
 内海トンネルは右のあたりにあります。
 多分あります。
 でもこの草むら、一体何があったのでしょうか。
 今では、海水浴客相手の駐車場です。

[2004年8月現在]
 
 2年ぶりに行って来ました。
 さてどんな状態になってるのか?
 まだ潰れないでいるだろうか?
 今回は一眼デジカメなので、
 写真撮りまくるぞ〜〜… って
 封鎖されてる!
 残念ですね。中には入れません。
 でも、危険な所に人が入れないのはいい事です。
 さすがにここは、危険すぎますので…
 横から入れそうに見えるけど、それは無理。
 中に入らなくても、
 トンネル内の様子は見えますよ。
[2006年5月現在]


こんなひどい状態のトンネルは初めて見ました。もはやトンネルとして機能してません。
車が通るためのトンネルだとすれば、ありえない場所に建設されています。
それはどんな所でしょう?
内海トンネルは、愛知県の知多半島の先、美浜町の小野浦の山の中にあります。

この辺りは「師崎(もろざき)層群」と呼ばれる、海底に堆積した砂や泥の地層で出来ています。崖とかの地層が出ている所では、砂岩・泥岩・シルト・火山灰の層がはっきり見えます。砂岩層などは硬い部分は崩れにくいのですが、シルト層は砂岩より粒が大きくて簡単に崩れてしまいます。崖などでは、シルト層がより早く崩れるため、そこだけへこんでいます。上の道端の崖の写 真がその状態です。しかも、ここの地質自体風化を受けやすく、硬い砂岩でさえ手で割れる程です。 トンネルの内部も、空気に触れてしまったため風化が進行し、今でも崩落し続けています。

その崩れた土砂についての、気になるうわさですが…
「トンネルの建設当時、土砂崩れがあって作業員が埋まってしまった。遺体を搬出する事も出来ず、今でも埋まっている…」と言う話が、某心霊系サイトにうわさ話として書いてありました。
結論から言うと、ありえない話でしょう。いくらここの地質がもろくても、一気に崩れて人が埋まってしまうとは考えられません。それに土砂と言っても砂利のような物で、数人の人間で簡単に掘り出せそうです。
確かに、あの状態を見れば人が埋まってそうにも見えますが、トンネルの出口を塞ごうとして崩れた土砂を集めた、と言うのが真相ではないでしょうか? 平均して土砂が積もるはずが、あの片寄り方は不自然です。
そもそもそんな事故が建設中に起れば、建設中止になってトンネルも封鎖されるはずです。

現場の地質などの状態から、うわさは根拠のないホラ話で決まりですが、ネット上で気になる記事を見つけました。内海トンネルのある小野浦の北東方面 に、布土という地区があります。その布土では昭和33年まで、磨き砂が採掘されていたそうです。昭和6年に採掘場で陥没が起り、13名が生き埋めになる悲惨な事故があったと言います。

その時の「生き埋め事故」の話が、内海トンネルの話として勘違いされた可能性があります。
勘違いというよりは、内海トンネルの話にすり変わったというのが本当の所でしょう。
■これは大正時代の地形図です。現在の国道247号線の、小野浦〜内海間の道がまだありません。お吉ヶ浜の海岸へは、海沿いの岩場を通 らなければ行けないようです。内海トンネルはちょうど町境の、山が一番狭くなっている所にあります。小野浦側から道を通 すより、短いトンネルの方が安くすんだのかもしれません。それを考えると、内海トンネルとは海岸に下りる歩行者の為のトンネルなのでしょう。それと美浜町史にも内海トンネルの記載は見付けられませんでした。行政ではなく民間で造った物の可能性もあります。それならあの、安っぽい造りも変わったデザインもうなずけます。
以上、好き勝手に推測してみました。
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