【愛知県・春日井市-月見橋】
愛知県春日井市は古い歴史を持つ街ですが、こんな所にも古い歴史を持つ物が…
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 春日井市で古い橋と言えば、
 明治時代に架けられた鹿乗橋があります。
 他にも城嶺橋なんて昭和の橋があるけど、
 まさかこれ以外にも
 立派なコンクリートアーチ橋があるなんて
 つい最近まで知りませんでしたよ。

 春日井市は高蔵寺高座町。
 高座山の南の麓にその橋はあります。
 ここらは古い住宅地らしく、
 斜面に家が建ち並んでます。
 高蔵寺ニュータウンとは雰囲気が違い、
 閑静な住宅地です。
 とは言え、古いだけあって道路は狭いです。
 で、問題の橋はこれ。

 あ…赤い。
 
 鋼鉄製の橋で赤い物は普通にあるけど、
 コンクリ橋で赤いってどうよ?
 しかも、まっかっか。
 夕方近くに来たために、
 よけいに赤さが強調されてます。
 親柱はあっさりめなデザインで、
 銘板が残ってます。
 「月見橋」
 “見”が違う字に見えます。
 最初見た時、「之」だと思った。
 
 親柱の上には照明器具が。
 う〜〜ん…微妙なデザインだ。
 新しいような、古いような…
 と思ってたら、銘板に竣工年があった。
 昭和4年6月竣工だそうです。
 戦前です。結構古かった。
 「昭和4年」と言うのが、
 後に橋の正体を知る手掛かりに…
 あ。この丸い電球って、
 もしかして満月のつもりなんだろうか?
 月見橋って事で。
 
 アーチは下にあるので、
 上を通る道路は少し殺風景。
 場所的に山の中なので、
 木々が多くて緑豊かです。
 別荘地という雰囲気だけど、
 実際はちょっと雑然とした感じです。
 
 さて、これがアーチの全景です。
 何という立派なアーチでしょう!
 5つのアーチで支えてます。
 これは「開腹アーチ」という形式です。
 昭和初期というのは、
 アーチ橋がどんどん大型化していった
 時期じゃないでしょうか?
 当時の最先端技術で造られてる訳ですね。
 
 橋の下にも行ってみましょう。
 橋の下は広場、
 と言うか公園になってます。
 なぜかベンチが四角く置いてありますが…
 橋の下にあるべき川は、
 暗渠になってます。
 上の写真では川が外に出て来た所です。
 それにしても、なんてごついアーチなの。
 しかも、鉄板で補強されてます。
 
 反対側の橋台はどうでしょう?
 なんか凄いことになってる。
 土留めの壁に
 さらに6枚もの壁で補強されてます。
 こんな厳重なのは初めてです。
 新しい橋では見ない物です。
 当時の技術では、
 補強が必要だったのでしょう。
 

 いや〜 すごいなぁ
 こんなアーチ橋があったなんて。
 下からまじまじと見上げてたら…
 アーチの裏側に何か書いてある?
 ★普通じゃなくてもいいじゃない
 ★目に見える「愛」なんて愛じゃない
 変な落書きだと思ったら
 心に響くイイ言葉だった。
 ★「友達」ってゆーのは、
  ジュース屋じゃないんだよ
 って、中学生かよっっ!!

 
 あれは、誰かの心の叫びなんだね。
 さて、橋なのに川が無く
 下は公園なのですが、
 まるで、森林公園のような雰囲気です。
 でも、町中の遊園地で見掛ける遊具が
 何気に置いてあります。
 森の中にある滑り台ってちょっとシュール。
 こんな公園で遊んだら面白そうだけど、
 今時こんな所で遊ぶ子供っている?
 
 取材した日は5月5日で、
 まさにお子様のための日なのに、
 人っ子一人いない。
 寂れてるのかと思いきや
 遊具はちゃんと手入れされてます。
 ブランコにシーソー…
 木々に囲まれたシーソー…
 なんか、肩身が狭そうだね。
 
 立派なコンクリアーチ橋と、
 なんだか微妙な雰囲気の公園でしたが、
 橋の側に立ってた看板を見たら、
 いろいろ分かりました。
 最後に大きな画像貼っといたので、
 それを見てください。
 高蔵寺や高座山の住宅地の由来とか、
 歴史的な事が書いてあります。

[2012年5月現在]

春日井市の東部にある高蔵寺ニュータウンは、ベッドタウンとして開発されました。
今回の橋は、そのニュータウンの東側の高座町にあります。
高座町の南側を流れる庄内川は、かつて玉野川と呼ばれていました。
玉野川周辺は、名古屋の奥座敷と言われる程の景勝地でした。
例の看板によると、昭和4年に、高倉土地と言う会社が宅地開発をしたそうで、
その際に「現道路を造成」したとあります。月見橋もその時に造られたものでしょう。
「将来の名所を目論んだ」そうで、この橋は象徴となるべく、立派なアーチにしたのでしょう。
植樹された400本の桜と橋の下の園地は、今では人々の憩いの場になってますね。
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