【岐阜県・中津川市-対鶴橋】
岐阜県中津川市の坂下町の県道6号線の傍らに、隠れるように古い吊り橋があります。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 

 中央本線の旧トンネルを探索中に
 偶然見付けた吊り橋です。
 県道から見下ろす位置にあり、
 中央本線の旧トンネルを探すために
 木曽川の河原を見に行かなかったら
 気が付かないところでした。

 気付いてよかった橋はここ…■周辺図■


 県道6号線から階段を降りて来ると、
 吊り橋の主塔が目の前にあります。
 ちょっとした踊り場になってる所から
 主塔の上半分が見えます。
 県道とはかなりの高低差があります。
 
 主塔をこんな高さから見るのって
 ちょっとないですよ。
 しかも扁額もこんな間近に見れる。
 「對鶴橋」
 “對”の略字が“対”で、
 「たいかくはし」と読みます。
 つがいの鶴の様な橋って意味でしょうか?
 そんなに優雅な姿には見えないけど…
 
 どうやらここは歩行者のための道のようです。
 アスファルトで舗装がしてあるものの
 車なんて通れそうもありません。
 しかもなんか、門みたいになってるし。
 こんな物初めて見た。
 看板によると、やっぱり車は通行できませんが、
 バイクは押して行けばOKだそうです。
 それ以外にも、橋が老朽化してるだの
 10人より多く通るな だとか、
 頭上や足元に注意してって書いてある。
 ・・・それってやばくない?
 
 そう言えば、美濃市の美濃橋にも
 似たような事が書いてあったけど、
 「足元に注意」までは書いてなかった。
 そんな大袈裟な…って思ったら
 床板がなんか変な感じで…
 床板がつぎはぎだらけだ。
 し…しかも、隙間が開いてる!
 その隙間を塞いだ板が
 そこかしこに・・・
 た…確かに「足元に注意」だわね。
 
 あ。そうそう、ここもあの桃介橋と同じく、
 橋桁が木造のトラス補鋼です。
 頑丈そうです。
 でも頑丈そうに見えるだけです。
 ゆれるたびに木材が、
 …ぎしっ …みしっ
 ってきしむ (≧△≦)ヒ〜
 超こえ〜〜〜
 途中、割れた木材を修繕してある所もあった。
 いやマジ恐いから。
 冗談じゃないから。
 
 なんとか対岸まで来ました。
 こちらも門のようになってます。
 よく考えたら、こんな狭い隙間は、
 原付スクーターぐらいしか通らないね。
 いや、そもそもこんな危うい床板
 200kgもあるバイクの重さに耐えられるの?

 さて、ここは何だろう?
 一般の道路とは異質な雰囲気がします。
 この近くに発電所があるので、
 対鶴橋も発電所関係の橋かもしれません。
 やはり「福沢桃介」が関係してる?
 
 橋の全体像をちょっと離れた所から。
 なんか影になってわかりにくいですね。
 こうして見ると、けっこう長い橋なんだ。
 それにしても、こんな古い吊り橋
 よく残っていたもんだ。

 [2007年1月現在]

この対鶴橋は、「賤母(しずも)発電所」建設のための資材を、中央本線の坂本駅から運ぶために、
大正7年に福沢桃介によって建設されたものです。
長さ111.47mの2径間のトラス補鋼吊り橋で、鉄道橋を除けば木曽川に架けられた最初の本格的な橋です。
むろん発電所工事用の吊橋としても最初の物です。設計者は石川栄次郎。
本編でも触れた対鶴橋の名前の由来ですが、賤母発電所など大同電力の造ったほとんどの橋には、
会社にちなんだ人名などが付けられており、木曽川での木材の川流し問題を解決に導いた、
帝室林野管理局長官・南部光臣の家紋より名付けられました。
“対鶴”とは鶴が向かい合った形の家紋の事です。

この対鶴橋は、昭和51年(1976)に改修されています。
主塔のセメント吹き付けや補鋼トラスの復元などが行われました。
しかし、補修後のトラス部分の接合部に隙間が生じており、釘を打ち付けて修理されています。
これはトラスの対角材をほぞ穴に差し込むという工法で造られたためであり、
橋を歩く際に出る“きしみ音”の原因ではないかと思います。

参考文献:南木曽町教育委員会「桃介橋修復・復元工事報告書」
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