【岐阜県・中津川市-黍生洞門の吊り橋】
国道19号線にある黍生(きびゅう)洞門は、数ある洞門の1つにすぎません。
しかし、その洞門の上には、有り得ない場所に架かる吊り橋が・・・
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 ある日気が付いた。
 国道のずっと上に吊り橋があるのを…
 それも川も谷も無い場所、
 洞門の真上に…!
 でも、どうやって行こう?
 まずは地図で位置を確認→■周辺図■

 場所はこの廃道のすぐ近くです。
 明治の国道の雰囲気が残る廃道ですね。
 で、問題の吊り橋はこれ。
 山の中腹に白い吊り橋が架かってます。
 大きさからしても車サイズじゃない。
 林道のたぐいじゃありませんね。
 う〜ん…なんだろう? 気になります。
 …でも、道が無い。
 
 それなら直接あそこまで行っちゃえ。
 と、言う訳で、斜面を上がって
 橋に繋がる道に来ました。
 そこは思ったより細い道でした。
 これは…遊歩道?
 それにしては素っ気ない。
 やっぱり林業関係の道なのかな?
 木の杭で土が崩れるのを防いでる。
 
 少し歩くと・・・
 あった。ありました。
 白い吊り橋。
 何かのパイプが橋の下をくぐってます。
 それに欄干が狭い。
 一列に並んで歩かないと渡れませんね。
 まあ…今は私一人なんですが。
 写真には写ってませんが、
 橋の手前の道が崩れていて、
 何気に危険です。
 

 ちょっと危ない斜面をから、
 橋の全景…と言っても半分だけど、
 を撮影しました。
 こんな感じの場所に架かってます。
 橋は川や谷じゃなくて、
 斜面のコンクリ法面の上を跨いでます。

 ちなみにこの写真と上の写真と
 最初の写真は2008年12月
 他は2010年5月です。

 
 前フリはこれくらいにして、
 さっそく渡ってみよう。
 橋桁が細いからなのか、
 ちょっと揺れます。
 でも、それより両側がスカスカのが怖い。
 手すりとかネットとかの安全設備なんて
 まったくありません。
 いや、一応ワイヤーが張られてるけど、
 ちょっと遠くて役に立ってない…
 

 中間あたりまで来ました。
 メインケーブルがあんなに下の方に…
 うわぁ…私今すごい無防備な状態だ。
 でも、ケーブルが低くなって
 欄干の代わりになるかも?
 ああ、それにしても、
 下のコンクリが異様な景色だわ。
 落ちたら痛そう。

 
 おそるおそる歩いて
 反対側に着きました。
 これでひと安心…じゃなくて、
 まだまだ吊り橋は続きますよ。
 そう、実はこの吊り橋
 主塔が3つあるんですね。
 ちょうど吊り橋を2つくっ付けた形です。
 あの桃介橋と同じ形式ですね。
 
 中間ポイントに着きました。
 主塔が3つあるのって、
 この橋が途中で曲がってるために、
 真ん中に主塔が必要だった訳で、
 桃介橋に似せた訳じゃないようですね。
 あれ?主塔が2つ並んでる?
 
 なかなか変わった橋だね〜
 なんて思って上を見たら・・・
 あれ?メインケーブルが繋がってない?
 お互いに反対側の主塔に付いてる?
 これは…引っぱり合ってるんだ。
 こんな風にすることで、
 反対側の橋桁を重し代わりにしてるんだ。
 つまり、お互いが相手の
 アンカレージになってる訳ですよ。
 これはスゴイ工夫だ (´ ▽ `)b
 
 さて、2つ目の吊り橋です。
 こっちは幅が狭くて、
 両脇のワイヤーが掴みやすくて安心です。
 左側を見れば、木曽川が下の方に見える。
 それに遠くには対鶴橋も見えます。
 ここは洞門の上なので、
 下を走る国道は見えません。
 でも、洞門の上の部分が見える。
 雑草が生えていて、地面みたいだ。
 
 狭くて揺れる橋の上で向きを変えて
 振り返ってみました。
 おおっと。こりゃイイ。
 坂下の町並みがよく見える。
 しかも… こんなに高かったの?
 こっちの景色の方が高さを実感できる。
 国道19号線を走る車も小さく見えるよ…
 コンクリの法面をかすめて
 橋が架かってるもよくわかります。
 こういう場合は普通、桟橋だろうけど、
 ここじゃ吊り橋なんですね。
 
 反対側まで渡りきりました。
 短いと思っていたけど、
 100mくらいあったかも?
 それにしても、
 吊り橋でコンクリの上を渡るなんて
 なんと言う不思議体験。
 
 こちらは普通のかっこうですね。
 向こう側みたいに
 “くの字”になってません。
 ん?よく見ると主塔に何か貼ってある?
 「平成15年度水力発電施設周辺
 地域交付金交付施設」ですって。
 確かに、近くには賤母発電所があります。
 それ関係なんでしょうか?
 
 アンカレージに繋がってる
 メインケーブルの部分ですが、
 ちょっと変わってる。
 クルリと丸まってます。
 こんなの初めて見た。
 さて、これで
 洞門の吊り橋レポートは終わりですが、
 この先も確認してみましょう。
 
 登山道のような道が
 まだまだ続いてます。
 あれ? こんな所にお地蔵様?
 いや違う、「飯綱大権現」だって?
 飯綱権現って長野県発祥の
 山岳宗教の神様だよね?
 天狗とも関係があるので
 やっぱり山仕事する人達が祀ったのかな。
 しかも注連縄や御幣があって、
 今でも信仰してる人が居るんだね。
 

 なんだかハイキングしてるみたいな
 雰囲気になってきた。
 面白い事に、道に光が当たって
 光の道になってる。
 山奥のような景色だけど、
 左の方には、賤母発電所へ水を送る
 水路が見えます。

 
 もう少し歩くと、林道に出ました。
 こんな所に地図に無い林道が…!
 ちなみに、今来た道は林道の左側です。
 ここで山道はお終い。
 里山の集落の道を下って
 国道19号線に戻りました。
 …と、言う事は、ここから来れば
 強引に斜面を上がる必要は無かった?

[2010年5月現在]

吊り橋の中央主塔の説明が言葉だけではわかりにくいので、図にしてみました 。

こんな感じでしょうか? 桃介橋のように、主塔が3基ある場合、
真ん中の主塔には大きな力が掛かり、左右の主塔より強度を増やす必要があるのですが、
この橋のように、主塔を2つ並べて、それぞれが1径間の荷重だけを受け持てば、
主塔そのものに補強をしなくても大丈夫なのでしょう。
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