【岐阜県・県道317号線旧道 一谷坂隧道】前編
岐阜県郡上市白鳥町の東側にある「一谷坂(いったんざか)トンネル」。
その横にはかつての峠越えの旧道があります。しかし、その傍らには放棄された廃隧道が口を開けています。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 ついに見付けたとんでも無い隧道。
 今までも廃隧道を幾つか見て来たけど、
 これは別格の強烈な物件です。
 素堀り、狭小、崩落と
 廃物件として、申し分ない条件をそなえてます。
 もう、最高ですよ。
 ちなみに正式名称が不明なため
 一谷坂隧道と勝手に命名しました。
 地図も見てね→■周辺図■

 「一谷坂トンネル」横の旧道は、
 すっかり廃道の様相を見せてます。
 廃道としてはよくある雰囲気です。
 まあ、こんなものかなぁ…
 何て考えてたら、
 視界の隅にちらっと黒い物が…
 え?まさか隧道?
 よく見たら小さな隧道が口を開けてます!
 おお!これはすごい!
 こんな所に隧道があるなんて。
 しかも廃っぽい。
 

 廃隧道キタ――――――!
 来まくり。
 上から垂れているつる草もナイス。
 近付いてもやっぱり小さいです。
 県道の旧隧道なのこれ?
 車、通らないよ。

 それにしても、森の風景に溶け込む様に
 ひっそりと存在しています。
 隧道の前に道が無いのが変な感じ。

 
 ちょっと斜め上から見てみましょう。
 けっこうしっかりした造りです。
 デザインだけになった笠石もあるけど、
 全体的にあっさりしたポータルです。
 大正から昭和初期の物でしょうか?
 何となくその辺りの時代の雰囲気を感じます。

 さて、中に入りましょう。
 坑門の向こうは闇が満たされてます。
 隧道の中からは冷たい風が吹き出して来ます。
 一体中はどんな状態なんでしょう。
 「どきどき」で「わくわく」な一瞬です。
 
 入ってみると下り斜面になってます。
 あれ?
 広い?
 中は以外と言うか、当たり前な広さがあります。
 どうやら隧道前の道ごと
 坑門が埋められた様です。
 中から見ると、半分弱埋められてますね。
 崖が崩れたと言うより、
 人為的に埋められた様です。
 しかし、隧道の中まで埋めるつもりが無いのか
 土砂は入り口で止まってます。
 その代わりごみが沢山落ちてるけど。
 
 コンクリート巻きは坑門の部分だけです。
 その奥は素堀り…って
 穴小さすぎだろっ!
 ちょっと待って下さい。
 小さいにも程があるってもんです。
 ひとまわり小さいぐらいなら有り勝ちだけど、
 これじゃいかなる車輌も通行不可ですよ? 
 でも、何でこんな狭いの?
 元々人間用の隧道があって、
 後から広げようとしたのかしら?
 それとも両方の坑門を造って
 取り敢えず掘ってつないだのか?
 謎ですね。
 
 中にはヤンマーの農作業用の機械が
 2台放置されていました。
 それにしても狭い。
 しかも漏水があるので、
 隧道の壁は水でしっとり濡れてます。
 おかげでほこりっぽくなくて良いのですが、
 頭の上に水滴が落ちて来ます。
 すごい荒削りの壁。
 低い天井は手が届きそう。
 …あ、届いちゃった。
 手が届きます。
 この写真は振り返って入り口を撮影。
 
 あらためて隧道内部を見てみましょう。
 フラッシュを使ってるので
 明るく写ってますが、中は真っ暗。
 一寸先は闇です。
 真ん中に小さく光の点があるけど、
 これが反対側の坑門からの光りです。
 遠い訳じゃありません。
 途中で崩れて塞がっているみたいです。
 これが閉塞隧道ならば、
 私が行った初めての閉塞隧道になります。
 これは凄いことになって来た(^ω^)
 それと床には、プラスチックのかごが
 点々と置いてあります。
 何かの栽培でもしていたの?
 
 あらためて素堀りの内壁を見てみましょう。
 薄茶色の岩は「凝灰岩」と言う
 けっこう固い岩石です。
 他には砂岩や泥岩などの堆積岩があります。
 凝灰岩は固い岩石ですが、
 風化すれば簡単に崩れてしまう岩です。
 しかし、表面が地下水で湿っているため、
 風化が押さえられているのか、
 崩落している所はありません。
 それとこの表面の白い模様。
 一瞬、「かび」かと思ったけど、
 よく見ると石灰岩みたいです。
 
 石灰岩の主成分である炭酸カルシウムが
 雨水や地下水で溶け出し、
 地下で再び沈澱した物のようです。
 この隧道内にはいたる所にその
 白っぽい物が付着してます。
 この白い物が本当に炭酸カルシウムなら、
 今まさに鍾乳洞が出来つつあると言う事です。
 あと何万年もしたらここも
 隧道鍾乳洞になる事でしょう。
 …何て気の長い話。

 床には泥が積もっていてドロドロです。
 
 やって来ました、閉塞地点。
 天井から岩が落ちて来てます。
 でも、これって大きな隙間がある。
 閉塞しては無いですね。
 っていう事は通れますよ。
 先程のプラスチックのかごが
 ここにも沢山ありました。
 いや、そんな事より、さっきから変な音が…
 ライトの前を「何か」が横切ったけど、何?
 …!!
 ってコウモリだ〜!
 ―つづく
[2005年4月現在]

偶然見付けた廃隧道ですが、素堀りとか崩落とかより、この隧道の見所は何と言っても
人間しか通れない程の、信じられない狭さです。
この崩落の先には、さらに凄い空間が広がっています。
一谷坂隧道/旧道TOPへ… 後編へ続く…