【長野県・松本市-家の向橋】
長野県の梓川には3つのダムがあります。その中の水殿ダムと稲核ダムの間に架かる橋です。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 梓川に架かる吊り橋と言えば
 「中山橋」と「藤橋」に行ったけど、
 もうひとつ長い橋が残ってます。
 その名も「家の向橋」
 …変わった名前ですね…
 まあ、とにかく渡って来ましょう!

 地図で見ると、国道より少し離れた所、
 民家が数軒ある集落の向こう、
 細い道を入った先にあります。
 具体的には右はじの民家の裏手に
 今回の橋が架かってます。
 だから「家の“向こう”橋」なの?
 いや、そもそも「いえのむこう」って
 読むのだろうか?
 あ。例の橋が画面の中央少し下に
 写ってますよ。

 
 細い道を行き止まりまで来ると
 左に曲がって広い場所に出ます。
 その向こうに小屋があり、
 小屋の前に…
 アンカレージがある!
 小屋の前のスペースって
 まるごとコンクリの固まりです。
 なんて大胆な。
 
 と言う事は、
 小屋の向こうに吊り橋本体が…
 ありました。
 でも、斜面の下の方にある。
 しかも道が無い。どうしよう?
 周りを見回しても道が分からない。
 なので正面突破します。
 アンカレージの横から、
 急斜面を降りて橋の所まで行きます。
 
 なんとかここまで辿り着いた。
 デザインは「藤橋」に似てますが
 こちらの方がスッキリしてます。
 やはりと言うか、通行止め。
 ここの看板はちゃんと仕事してます。
 体を張って通行を阻止してます。
 ゴールキーパーのように横っ飛びです。
 でも、上ががらあきです。
 ひと跨ぎで通過できますね…
 
 その前に、
 周りの様子もチェックしましょう。
 ここも銘板は健在です。
 「家の向橋」
 変わった名前だ〜… って、
 最初から連呼してましたが…
 もう一方の柱には竣工年があります。
 「昭和四十三年八月竣工」
 

 橋桁の下が見えないかと思って、
 横から覗いてみたけど、
 これぐらいしか見えなかった。
 鉄製のフレームが吊ってあり、
 鉄骨をバッテンに組んで
 トラス構造にしてあります。
 橋が傾いてますが、
 傾いてるのはカメラの方です。

 

 上の写真の右はじのコンクリの部分、
 主塔の土台に別の銘板があった。
 これは、製作会社の銘板ですね。
 「中山橋」にもあった、
 東綱橋梁株式会社の銘板です。
 支間130メートルだって?
 そんなに長いんだ…

 
 では、渡ってみましょう。
 事前情報では、
 藤橋よりまずい状態らしいですが、
 特に危なさそうには見えません。
 が、油断は出来ません。
 ここは慎重に渡るとしましょう。
 
 100メートル級ともなれば
 主塔も立派なもんです。
 近くからだと、全体が写せません。
 なので見上げるアングルで。
 

 次は見下ろして床板のチェックです。
 すっかり乾燥しきった
 古い材木の様相です。
 釘の刺さってる所もはがれてしまって、
 ちゃんと固定されてない。
 思った通り、足を乗せると
 ガタガタ動きますよ…!

 
 130メートルかあ…
 長いなぁ…
 ローアングルだと、余計に長く見える。
 ネットがあるので、
 左右は安心ですね。
 でも、下が心配。
 抜けたらヤバ〜〜イ。
 なんと言っても下はダム湖だしね。
 

 ここで国道側を見てみましょう。
 家がほとんど見えない。
 むろん国道も見えません。
 人の住む場所のすぐ近くに居るのに
 なんと言う孤独感。
 今ここで具合が悪くなって倒れても
 誰にも気付いてもらえない訳です。
 それはちょっと恐いぞ。
 …まあ、ケータイがあるので
 なんとかなるんでしょうが…
 ・・・電波が届けば… ね。

 

 それにしても、狭い渓谷と違って
 気持ちいい程の開放感です。
 あれに見えるは、稲核ダムです。
 広いダム湖の上を
 風が吹き抜けて行きます。
 おかげで、橋が揺れます。

 
 ようやく中間地点に来ました。
 床板は相変わらず危ない状態です。
 板と板の間には、
 いやらしい隙き間があいてるし、
 数枚ごとに、折れそうな板もあります。
 そう言えば、事前に調べたところ、
 横のネットがひしゃげてる場所があったけど
 ここかな?
 放置されてる橋だと思いましたが、
 最低限の修理はされてるようです。
 

 「藤橋」でもそうでしたが、
 橋の上に動物のフンが少ないです。
 長過ぎる橋は動物も渡りたくない?
 さて、そうこうする内に対岸に到着。
 130メートルたっぷり吊り橋を
 堪能しました。

 
 橋を渡った先は、
 つぶされたトタン板があった。
 金網もあったので、
 これで橋を封鎖してたみたいです。
 いったい何を防いでたのだろう?
 人間? それともケモノ?
 今は何者をも防いでないけどね。
 
 対岸にも道があるはずですが、
 すっかり雑草に埋もれてます。
 画面左側、稲核ダム方向には
 木々に隠されたような道が続いてます。
 稲核ダムの横から延びる林道に
 合流してるようです。
 画面右側にも、近くの吊り橋に行ける
 細い道があるのですが、
 こちらも廃道状態になってます。
 こっちの吊り橋には後で行きましょう。
 
 家の向橋ともう一つの廃吊り橋
 上沢橋の探索が終わったので撤収します。
 残る課題は、集落から橋に行く
 正しい道筋を調べる事。
 橋から西に向かって細い道がありました。
 画面の真ん中にその道があるけど、
 こんなん上からじゃ見えないよ。
 取り敢えず行ってみましょう。
 通れなかったら、
 また斜面を上がらなきゃ…ね。
 
 最初の内は踏み跡があったけど、
 すぐに雑草に埋もれてしまった。
 とは言え、背が低いので
 歩くには支障がないのですが、
 路面の状態が分からないので
 ちょっと心配。
 どこに続いてるかと思ったら
 途中にヘアピンカーブがあって
 180度向きを変えます。
 画像はそこから橋の方を見たものです。
 ただの草の斜面にしか見えないね。
 
 スイッチバックで斜面を上がって来ると
 道は畑の横を通ります。
 そこを進むと、
 アンカレージの小屋の前に出ました。
 こんなルートだったのかぁ…
 全然気が付かなかったよ。
 ちなみに、橋の前にある民家は
 どうやら人が住んでないようです。

[2012年6月現在]

家の向橋、読みは「いえのむかいばし」だそうです。
“家の向”とは地名でしょうか? 家の向こう側にあるから“家の向”なのかも?
この家の向橋を渡った先は、ダム湖を巡る巡視路があるだけですが、
地元の人が使っているとは思えぬ荒廃ぶりです。
水力発電所関連の地方交付金で作られた施設かもしれません。
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