【静岡県・浜松市佐久間-平沢の旧道橋】旧・原田橋跡
佐久間と言えば、佐久間ダムで有名な所です。
そこを通る国道には、原田橋と言う大きな吊り橋がありますが、まさかの旧道が…!
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 まさかこんな所に
 旧道の橋があろうとは…
 本当に偶然見付けた
 埋もれた旧道橋です。
 橋の位置が分かり易い→■周辺図■

 浜松市の天龍区水窪に
 吊り橋や林鉄跡を見に来ました。
 その途中に通ったのがこれ、
 国道473号線に架かる
 補鋼トラスの大きな吊り橋
 「原田橋」です。
 今は桜の季節です。
 対岸には満開の桜があります。
 赤い吊り橋と桜の共演。
 これは是非とも撮影しなければ。
2012年4月

 どうせなら
 ちょっと変わったアングルで撮ろうと
 橋の北側… 上の写真で左端にある
 赤い矢印のあたりから薮の中に入って
 橋と桜が一緒に写せる場所を
 探してみました。
 そんなに桜が目立ってない?
 でも、ここから写した画像は
 ネット上で見た事ないので
 これはこれで面白いかも?
 
 そう言えば、
 橋の横に結構広い場所があるけど、
 何かあるのだろうか?
 これは北側…
 佐久間ダムの方向を見てます。
 なんか・・・
 道のようだ・・・
 ちょっと先まで行ってみよう。
 
 あれ?
 コンクリの欄干?
 って、これは…
 アーチ橋じゃありませんか!
 なんでここに橋があるの?
 橋の先には
 急斜面しかありませんよ?
 何の為の橋なんだろう?
 謎ですね。
 
 横から見えないだろうかと、
 原田橋の上から写してみた。
 ありますねぇ。
 画面真ん中ちょっと上に
 橋の高欄とアーチが見えます。
 って言うか、見えてるのに
 誰も気が付かなかったんだ。
 そりゃあ有り得ない場所だからね。
 

 でも、これは新発見だ。
 帰ってさっそくレポートを作ろう。
 で、撮って来た写真を
 調べてたら・・・
 あれ? もうひとつ橋がある?
 画面左にさっきのアーチ橋があって、
 その右側の谷になってる所に
 橋らしき物が見えます。
 まさか、あの橋の向こうにも
 道があるっていうの?
 これは再び調査しなくては。

2012年5月

 あれから2週間後に
 再び佐久間に行きました。
 しかし、橋が通行止めだったので、
 その日は調査が出来ませんでした。
 ところが事態は思わぬ展開に…
 何と、原田橋のメインケーブルが
 破損してるのが発見され、
 当面近付く事が出来なくなりました。
 この写真は、林道で迂回して
 橋の東側から撮影したものです。
2013年4月

 原田橋が通れないので、
 国道は河原に迂回してました。
 しかも、2輪は通れないだと?
 橋を直すのか架け替えるのか
 結論の出ないまま
 時間だけが過ぎていきました。
 結局、新しい橋を架ける事になりました。
 さらに朗報が。
 通行止めが解除されて、
 通れるようになりました。
 では、調査再開です。
 
 通れるようになったと言っても、
 交互通行の規制がかかってますが…
 歩行者は通り放題です。
 なので歩いて来ました。
 まずは前回見たアーチ橋の上から。
 これ、左右にコンクリの高欄が無けりゃ
 橋だなんて気が付かない。
 岩がすごい載ってるし、
 木も生えてるしね。
 
 穴があいてます。
 この穴が無かったら、
 橋の高欄だとは分からなかったです。
 原田橋が昭和31年竣工なので、
 もう50年以上前ですよ。
 いわゆる半世紀だ。
 だからなのか、
 土砂で路面が埋まってる。
 
 橋を渡って国道側を見てます。
 完璧な廃景ですよ。
 これじゃ国道から見付けるのは困難です。
 それにしても、コンクリアーチ橋は
 頑丈なもんですね。
 こんな状態なのに、
 問題無く渡れます。
 …ここは問題無いんですが、
 本当の難関はこの先に・・・
 
 道…無くなってます…
 全て土砂に飲み込まれてます。
 これを通れと?
 この画面だけ見ると
 大した事ない様に見えますが、
 右側は垂直の崖です。
 6枚目の写真を見れば分かるけど、
 土の崖じゃ無くて
 そそり立った岸壁です。
 20mぐらいの高さですが、
 落ちれば死にます。
 
 しかし、危険を冒して
 この斜面を通らなければ、
 もうひとつの橋には行けません。
 ここは慎重に歩かねば。
 どれほど危ない場所なのか、
 危ない景色を撮ってみました。
 そこの崖っぷちまで3m程です。
 足を滑らせたら
 その3mに命を懸けなくてはなりません。
 そこの木を掴めればいいけど、
 掴み損ねたら・・・
 
 何とか安全地帯まで来れました。
 で、振り返って見ると
 こんな感じの斜面です。
 木がまばらに生えてるのが、
 逆に歩きにくいのです。
 目の前の所なんか
 掴まる所が無くて、
 一番危なかった訳です。
 しかも、土の中に
 細かい砂利が混ざってるので、
 滑り易くなってます。
 
 さて、第二の橋はと言えば…
 おお。立派な物が架かってますよ。
 親柱がしっかり残ってます。
 
 残念ながら銘板はありません。
 名前も竣工年も分かりません。
 親柱のデザインは、
 大正から昭和の雰囲気があります。
 この橋は何の為に架けられたのか?
 どうやら原田橋以前にあった旧橋
 旧・原田橋の為の橋だったようです。
 旧橋は大正4年の竣工だそうで、
 これも大正時代の橋な訳ですね。
 
 こちらも路面は土に埋もれてますが、
 ビールケースが落ちていた。
 プラスチック製なので
 そんなに古く無いんだろうけど、
 半分ほど埋まってます。
 しかも、木が生えてきてる。
 っていうか、誰が持って来たの?
 
 渡ってみた所で
 銘板は無いですねぇ…
 
 橋の横の山側には
 水が流れるミゾがあった。
 雨が降ると
 ここが滝になるのだろうか?
 
 橋を渡った先には、
 ちょっとした広場になってた。
 ここに旧・原田橋があったようです。
 なにか残ってないだろうか?
 調べてみましょう。
 
 旧・原田橋は鉄製の主塔の吊り橋でした。
  それは今もか。
 でも古い橋の方はトラス構造の主塔で、
 補鋼トラスの橋桁を吊ってました。
 ここらに橋台とかアンカレージとかの
 遺構があるはず。
 でも、あったのはこれだけ。
 コンクリの立方体だ。
 他には何もありませんでした。
 
 最後に橋を川の方から見てみましょう。
 これが精一杯です。
 コンクリの擁壁があります。
 これで旧道橋は全てですね。
 まあ、旧道と言っても
 国道になる遥か以前の道ですがね。

[2013年4月現在]


現・原田橋は、佐久間ダムの工事に関連して、昭和31年に架け替えられた物です。
それ以前に架かっていた旧橋は、鉄製主塔の吊り橋で、
大正4年4月22日竣工、橋長 111.8m、幅員 2.4mで橋桁は木造トラス補剛でした。
今回レポートした廃橋梁は、その旧・原田橋に通じる道にある橋です。
「原田」は地名ではなくて、佐久間の為に尽力した郷土の偉人・原田久吉の名からです。
原田橋は、原田久吉翁の寄付によって完成した橋なのです。

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