【滋賀県・県道265号線-谷坂隧道】
滋賀県浅井町の山越えの県道には、素晴らしいデザインの隧道があります。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 

 滋賀県の隧道はやっぱりすごいです。
 こんな、何でも無い山の中に
 こんなにも個性的な隧道があろうとは!

 ところで「村田」って誰?

 隧道周辺図はこちら→■周辺図■

 隧道を求めて、
 やって来ました湖北の地。
 国道365号線から県道273号線→264号線と通り
 草野川を渡ると、
 山に向って県道が延びて行きます。
 写真は隧道手前の風景ですが、
 どこにでもある、山を通る県道の景色です。
 しかし、振り返ってみれば
 そこには…
 
 「谷坂隧道」のお姿が。
 なんて立派な。
 仰々しいまでに重厚なデザインです。
 まるで壁のようです。
 実際目の前にすると、
 立ち塞がっているかのように感じられます。
 坑門の左右には、ピラスターと呼ばれる
 柱のような物があります。
 
 近付いてみると、
 コンクリート造りなのがわかります。
 アーチ部分は石みたいですが?
 でも、かなり装飾的に作られてる。
 構造的には、あってもなくてもいいみたいです。
 っていう事は、
 このポータル部分って単なるデザインなの?
 煉瓦じゃなくてコンクリートなので
 そんなに強度を気にしなくてもいいからでしょうか?
 でもまあ、だからと言ってこの隧道の素晴らしさが
 損なわれる訳じゃあナイけどね。
 
 扁額も立派な感じです。
 達筆すぎて、「谷」が違う字に見えるのは
 気にしないでおこう。
 昭和拾年拾弐月竣功
 この隧道を始め、滋賀県の隧道達を造ったのは
 「村田 鶴」という人だそうです。
 で、この村田さんはかなり謎の人物で、
 どこ出身か?とか、わからない事が多いそうです。
 
 せっかくなので、ポータルのデザインも
 もっと堪能しましょう。
 これが「ピラスター」です。
 柱に見えるけど、柱状の構造物です。
 近付いて見ると、型枠にコンクリートを流し込んで
 造った跡がわかります。
 それに「下見板貼り」風の所もコンクリート製です。
 一番上にある笠石の下に、四角い物が並んでいます。
 「デンティル」という物です。
 下見板貼りといい、まるで洋風建築のよう。
 ヨーロッパの、と言うより、アメリカあたりの建物。
 そう、あれです。アーリーアメリカン。
 
 先程も、立ち塞がっているかのようにって
 言ったけど、それはこの隧道のポータルが
 横に広くて大きな面積だからです。
 まさに立ち塞がる大きな壁。
 でもあの洋風建築的デザインのおかげで、
 逆に親しみのある姿になってる。
 これも村田さんの、遊び心の為せる技でしょうか。
 中もコンクリートで造られてます。
 今では当たり前な景色ですが、
 当時コンクリートと言えば最先端技術の一つでした。
 ていねいに造られてるので、
 現在も崩れている所はありません。
 
 反対側に出ました。
 こちらは琵琶湖側になります。
 デザインは同じながら、
 こちらの方がいくぶんきれいです。
 向こうの方は、
 オイル漏れでもしたかのように
 黒くべったり汚れてます。
 
 アーチの上の所には、
 何か、電線が通ってたと思える金属製の棒が
 残ってました。
 それにアーチの所の石?は
 貼ってあるだけみたいに見える。
 コンクリートで塗り込めてあるけど、
 ちゃんとブロックで造ってあります。
 ある意味こっている?
 
 「ピラスター」や「下見板貼り」風の部分です。
 昭和の初期に造られたにしては、
 滑らかできれいな表面です。
 なんでこんなにきれいなの?
 今時のコンクリート打ち放ち建築なんか、
 何年も経つと、きたな〜く汚れていくのに、
 60年以上前に造られたとは思えぬ綺麗さ。

 この角度から見ると、
 アーチのブロックの様子がよくわかります。
 これも石じゃなくて、コンクリートブロックかな?
 
 
 さて、この隧道レポートもこれで終わり。
 ここだけ見ると、なんてことない山の風景。
 隧道があるなんて想像も出来ないです。
 ちょっと周りの様子も探って行きましょう。
 バイクが置いてある所から脇道に入ってみました。
 山の上に道が続いていて、採石場のような所に
 続いているみたいです。
 路肩の崖を見たら、何と粘土の層が。
 県道脇には石灰岩や方解石が落ちてたので、
 てっきりこの山も石灰岩で出来ているかと思ったけど
 違うのでしょうか?
 それとも、風化した方解石だったのかも。
[2005年6月現在]

作者の住んでいる愛知県には、個性的と言える隧道は極めて少ないです。
滋賀県は「村田鶴」を得た事で、素晴らしい隧道を数多く造れました。
しかしこの「谷坂隧道」が、村田鶴最後の作品だそうです。
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