【岐阜県・中津川市-野田トンネル】
岐阜県中津川市を走る明知鉄道の阿木駅の近くにある、戦時下に造られた素堀りトンネルです。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 ロードマップに細ーく描かれた
 トンネルがありました。
 国道でも県道でもない、
 山の中の裏道みたいな道にある隧道…
 じゃなくて、トンネルです。
 え? 素堀り?

 周辺図はこちら→■周辺図■

 恵那市側から、県道406号線を東に走り
 阿木駅の横を通り過ぎて、
 細い山道を少し行くと、
 目の前に緑色のロックシェードが現れました。
 鮮やかな色合いで、
 新しそうだけど、何か大袈裟な気が…
 周りの様子からしても、
 車なんか通りそうもないけど。
 
 ロックシェードがくっついてるけど、
 扁額はあるはずです。
 ロックシェードの脇の隙間から入って行って、
 でこぼこの金属板をよじ登ってみました。
 思った通りそこには「野田トンネル」の額が。
 しかも、坑門には扇状の装飾まであります。
 これはちょっとすごいかも?
 全国的に見て珍しい物なのかはわかりませんが、
 トンネル設計者のセンスや主張が感じられて
 私的には好きです。
 こういうの。
 
 でもこのロックシェードはいただけません。
 実用一辺倒で武骨なデザインは、
 職人的な仕事ですが、センスは感じられません。
 いや、むしろ工務店的な仕事と言った方が
 あってるかも?
 明治時代に建てられた洋風建築なんかは、
 いわゆる和洋折衷なデザインで、
 当時の人達の遊び心が感じられて
 おもしろいのに、
 現代の物はつまんないデザインです。
 「遊び心」じゃなくて
 「強度計算」で出来てる?
 
 上の写真にもすでに見えてますが、
 内部は素堀りにコンクリート吹き付けです。
 しかも、けっこう距離もあって
 素堀りトンネルを存分に味わえます。
 長いだけあって照明も完備されてますが、
 蛍光灯…みたいです。
 だからと言うわけではないでしょうけど、
 中は暗いです。
 なんて思って撮影してたら、
 地元の人のトラックが通って行きました。
 ひょっとして思った以上に利用されてるの?
 
 反対側に抜けて来ました。
 こちらは一転して開けた場所です。
 ポータルのデザインは、
 先程とは違ってあまり特徴はありません。
 今まで、ここの様な素堀りコンクリ吹き付け
 っていうトンネルの場合、
 地質がもろい場所に造られていたけど、
 ここもそうみたい。
 大昔はこの辺りまで海が入り込んでました。
 この山も、その時川から流れ込んだ土砂が
 花崗岩などの岩盤の上に堆積して出来た
 もろい地質です。
 
 扁額をアップで。
 高さは2.5mまで。
 四角いボックスは、
 照明用の電源でしょうか。
 
 北側のポータルの前には
 石碑が立ってます。
 「隧道完成之碑」とあります。
 完成当時は「トンネル」じゃなくて
 「隧道」だったのですね。

 このトンネルは戦争中に
 地下軍需工場として掘られた物を
 トンネルに転用した物らしいです。
 一体中で何を作ろうとしたのでしょうか?
 
 坑門横にも高さ制限の看板が。
 下の看板には通学路に関する注意があります。
 え?通学で使ってるの、このトンネル。
 それって危なくない?
 まあ、地元の車しか通らないんじゃ
 事故なんか起らないでしょうけどね。
 トンネルを抜けると、目の前は開け
 山裾に数軒の民家が建つ、
 のんびりとした風景の中に
 道は続いていきます。

 
[2004年11月現在]

岐阜県各務原市にある三軒屋トンネルと同じく、太平洋戦争の落とし子として誕生したトンネルは、
村人達の生活に溶け込み、平和な時を過ごしています。
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