【岐阜県・飛騨市-滝見橋とニコイトンネル】後編
岐阜県下最大級のニコイ大滝。そこには30年以上放置された、観光地の廃墟があります。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 幻のニコイ大滝に架かる朽ちたアーチ橋。
 それは、想像通りのすごい物件でした。
 お次は捨てられたトンネル
 「ニコイトンネル」に行きます。
 ここは他にはない特徴があります。

 壊れそうなアーチ橋を渡って、
 ようやっとトンネルに来ました。
 いえ、橋はそんなに長くないけど、
 ゆっくり歩いて来たので…
 なんて言うか…
 いきなり瓦解しそうでコワイし…

 さて、気を取り直してトンネルです。
 ライトを準備して、いざ侵入です。
 
 トンネルのポータルは
 いたって無表情です。
 っていうか、飾り気が無い感じ。
 観光地と言うより、
 ダムか発電所のトンネルみたいだ。
 一応戦後の建設なので、
 きれいに出来てはいますね。
 あ。そうそう、今回は「隧道」じゃなくて
 「トンネル」と言いますよ。
 ニコイ“トンネル”なので。
 
 断面は円形じゃありませんね。
 圧力が掛からない場所だから?
 ますます発電所の通路っぽい。
 型枠の跡も、普通の隧道と違い、
 線がみんな同じ方を向いてます。
 床には外から吹き込んだ
 落ち葉が大量に溜ってます。
 それに、中から冷たい風が出て来ます。
 
 すぐにコンクリ巻き終了。
 素堀りになってしまいました。
 灰色のゴツイ岩肌が
 何とも荒々しい。
 30年以上も放ったらかしなので
 下にいっぱい落石があります。
 で、不思議な事に白い石が落ちてる。
 周りの壁をライトで照らしてみると
 壁が白くなってる場所がありました。
 これは… 花崗岩?
 
 後から調べてみたら、
 この辺りは約2億年前の変成岩だそうで
 その周囲にはこれまた古い
 約1億8千万年前の船津花崗岩と言う
 花崗岩が分布してるそうです。
 じゃあこの白いのも船津花崗岩の一部?
 しかも、石英の大きな結晶になってるよ。
 この写真でも左右1m以上はある。
 いわゆる巨晶花崗岩ってやつ?
 でかすぎ。
 
 トンネルの中をよくよく見てみれば、
 そこらじゅう白い筋が通ってる。
 これは溶岩が入り込んだトコロですね。
 貫入岩ってやつです。
 あ。もしや水晶があるかも?
 って思ったけど、そんな物は無かった 。

 …ああ、そうそう、階段ですね。
 実はこのトンネル、
 すごい坂になってるのです。
 すごすぎて階段が必要なのですよ。
 
 写真じゃ分からないけど、
 雨がふってます。
 雨と言いたくなる程の漏水です。
 壁も階段もびしょ濡れです!
 むろん私も濡れながら撮影してます。
 トンネルは右に左に曲がってて
 ちっとも真っすぐじゃない。
 固い岩盤を避けたからかな?
 それに、壁には金属製の棒のような物が
 あちこちに刺さってました。
 これって削岩機の部品なのかな?
 
 観光地だっただけあって、
 照明も完備・・・
 …って、はだか電球かい!
 それとこういう場所にはお約束の
 コウモリがいました。
 階段の上に黒っぽい泥があると思ったら、
 これ全部コウモリの糞なんだ。
 トンネル内がびしょ濡れなので
 臭わないないのですが。
 
 どれくらい階段を上がった事でしょう。
 やっと平らになりました。
 そして出口も。
 このあたりは花崗岩らしくて、
 白っぽい壁ですね。
 壁をよく見ると、
 カマドウマ的な虫が張り付いてた。
 
 トンネル終点ですが何処に出るのだろう?
 あれ? また橋がある。
 今度は鉄板橋だね。
 上に乗ってるのは、ハシゴかな?
 ─ってゆうか、これって欄干だ!
 倒れてる。しかも片方だけ。
 ナゼに???
 
 足下を見たら、こんな看板が…
  ニコイトンネル
  延 長 134m
  高低差 30m
  トンネル内は急勾配で
  す足元に充分ご注意下さい
  ニコイ高原管理センター

 って書いてあった。
 こんな所で隧道の名前が分かりましたね。
 いつの間にか30mも上がってたんだ。
 
 目の前に橋があれば渡りましょう。
 ここは頑丈そうですよ。
 とんっとんっと渡って振り返ってみた。
 お〜〜っと、スゴイよコレ!
 岸壁にトンネルがポンッと開いてる。
 ポータルが岩に同化してる。
 こんなの観光地ならではです。
 来た甲斐があるってもんです。
 
 橋は渓流の上に架かってるので、
 綺麗な景色が見放題。
 これは下流側で、
 この先はニコイ大滝になってます。
 画面で川が終わってる所に
 130mの大瀑布が落ちてるのですよ。
 覗き込むとすごい迫力だそうな。
 でも、ここから見える景色は
 正直微妙だけどね…

[2011年6月現在]

ニコイ大滝の前から、30mの“高さ”のトンネルを上がった先には、
今は見る事の出来ない「ニコイ大鍾乳洞」への道があるそうです。
ただしこのレポートは橋とトンネルだけなので、鍾乳洞は他所のサイトを参考して下さい。

ニコイ大滝のある場所は、日本で最も古い時代に形成された飛騨片麻岩類が分布する、
「飛騨帯」と呼ばれる地域です。
約1億8千万年前のジュラ紀前期に広範囲に貫入した溶岩を、船津花崗岩と言います。
飛騨片麻岩類は、約20億年〜4億年前の間に、何度も変成作用を受けて、
元が何の岩石だったのか分からない程、複雑な状態になっているそうです。
ニコイトンネルは、そんな気の遠くなるような長い大地の歴史が垣間見える
貴重な場所と言えるのではないでしょうか?
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