【長野県・県道22号線旧道-中山隧道】
長野県の山中にひっそりと隠れる廃隧道。
masakiさんのブログで紹介されていましたので、さっそく見て来ました。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 山の中なんて言ってますが、
 実際はひらけた場所にあります。
 それなのにちょっと分かり辛いです。
 しかし、隧道は素晴らしい
 廃な状況に…!

 天竜川沿いの県道18号線を生田で右折、
 県道22号線を東に向かいます。
 山村の間を走って来ると、
 こんな場所に到着します。
 簡単に“到着”とか言ってるけど、
 散々迷いました。
 旧道のアスファルトが残ってるのに
 見落としました。
 一見して道に見えないからですね。
 っていうか、旧道があるような
 地形に見えないからです。
 
 旧道の真ん前には大きな建物があって、
 どうやら福祉施設のようです。
 さて、旧道に入ってみましょう。
 路面に覆い被さっている竹を潜ると、
 問題の物件が姿をあらわしました。
 すごい。これは本格的な廃隧道ですよ。
 上の写真と同じ場所にあるなんて、
 信じがたい景色です。
 事前情報なしでこれを見付けたら、
 さぞや衝撃的であった事でしょう。
 
 路面は一面、落ち葉に覆われ、
 すっかり廃道の様相になってます。
 でも違和感を感じる。
 隧道のポータルの
 無表情な程のきれいさが
 周囲から浮いてるからですね。
 立入禁止にまでなってるけど、
 何で捨てられた??
 いや、そもそもここに隧道って必要?
 

 立派な扁額には
 達筆な「中山隧道」の文字が…
 コンクリ製ですね。
 「日本の廃道」のデータベースに
 延長66m 車道幅員4.5m 限界高4m
 竣工年度昭和10年…とあります。
 昭和10年?
 いや、どう見ても新しい風に見えるけど…
 後から改修されたのかもしれませんね。

 
 要石や迫石まである本格派…
 と思いきや、これイミテーションじゃない?
 薄い石材が貼ってあるだけみたい。
 割れた所からコンクリが見えてる。
 ピラスターもあるけど、
 これも“なんちゃって”ですね。
 昭和10年に造られたにしてはきれい過ぎで
 戦後にでも造り直したのかと思うけど、
 滋賀の谷坂隧道の例もあり、
 判別は難しいところです。
 
 隧道の中から来た方を見てます。
 A型バリケードが並んで
 侵入者をシャットアウトしてます。
  ひと跨ぎで越えられますが…
 で、内側の壁の型枠の跡がきれい過ぎです。
 ここでも昭和10年オリジナルに
 疑問符が付くわけです。
 わざわざ“昔風”に造るあたりに、
 現代的な“におい”を感じますね。
 
 これは木製の型枠の跡です。
 型枠が木製から金属製になったのが
 昭和30年代だと言うので、
 その手前の昭和20〜30年代あたりに
 コンクリで巻かれたのだろうか?
 照明は蛍光灯です。
 蛍光灯と言っても、家庭用じゃなくて
 道路用の専用品なんでしょう。
 そう言えば、外にスイッチがあったけど、
 照明は手動式だったの?
 
 外の廃隧道ぶりに比べて
 中はなんとも… 無味乾燥?
 がら〜んとして、
 風情もなにもありゃしない。
 幅が4.5mじゃあ、
 ぎりぎり2車線にできず1車線です。
 左右に路側帯の白線が引いてあります。
 山の中じゃ十分なクオリティです。
 …クオリティでした。だね。
 
 60m程の長さじゃ、
 すぐに反対側に到着です。
 途中、特に見所もなかったしね。
 やはり中山隧道の見所は外でしょう。
 さっそくA型バリケードのお出迎えです。
 ここから現道までは、
 短い廃道になってます。
 
 こちらは雨に濡れやすいのか、
 黒ずんでます。
 当たり前ですが向こうとデザインは同じ。
 
 少し離れてみた。
 こっちにも「立入禁止」。
 立ち入ったけど…
 左の標識は高さの制限が3.4mだって?

 さっきの「限界高4m」ってのは、
 限界ギリギリぶつかっちゃう高さ
 って事でしょう。
 路面にはコケや雑草がはえて
 廃道後10年以上経っていそうな雰囲気。
 こう言うのを「自然更新」と言うのですね。
 
 すぐに現道に合流です。
 現道は切り通しになってるけど、
 右側の法面は、
 旧道が現役時代からあるものでしょう。
 道はこの先下って行くので、
 隧道がある辺りは峠ですね。
 
 切り通しの前から旧道側を写しました。
 あ。1枚目に写ってる車がいる。
 で、旧道はアスファルトの段差で
 やんわりと、それでいて確実に塞がれてる。
 なんか建物があった跡みたいだ。
 やっぱりこの先隧道があるように見えない。
 現道が無理なく通ってるし、
 本当に隧道が必要だったの?

[2011年10月現在]

昭和10年に造られたと言う「中山隧道」。
全国隧道リスト1967年版」によると、最初からコンクリートで覆われていたようです。
果たして現在のポータルのデザインが竣工当時のオリジナルか?
何か隠された真実でもありそうな、謎の隧道です。
ちなみに隧道内は、昔は未舗装だったそうです。
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