【国道153号線旧道-伊勢神隧道】
愛知県下では他に例を見ない、素晴らしい石造りの隧道です。
県の文化財に登録されていますが、旧道となってからは寂れ放題になっています。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 国道153号線には、
 有名な伊勢神隧道があります。
 有名と言っても、心霊スポットなんて
 有り難く無いモノですけどね…
 でも、純粋に古い隧道として見ても
 十二分に素晴らしい隧道です。
 いっしょに地図も見てね→■周辺図■ 
 それに避けては通れない、例の話題も…

 伊勢神トンネルを抜けて東側に来ました。
 国道の北側に旧道の入り口があります。
 夏なのに落ち葉いっぱい落ちていて、
 微妙に旧道の雰囲気かもし出してます。
 でもこの道、今でも地元の人に利用されている
 生活の道です。
 旧道から分岐する道のおかげでしょうか?
 ちゃんと工事もされていて、管理ばっちり。

 では旧道に行ってみましょう。
 
 さすがは愛知の東西を結ぶ飯田街道。
 この並んだブロックがいい感じです。
 穴が開いているのは、
 ここに棒が挿してあった跡でしょうか?
 旧隧道が明治30年開通なので、
 このブロックも明治の物かも?
 苔むしていて、古い石仏のような風情です。
 
 道路横の切り通しに生える杉の木も
 大きく育っていて、
 峠道の歴史を物語っています。
 旧道東側は写真の撮りがいがあります。

 峠に向かって進んで行くと、
 何かが視界の端にいるのを発見。
 え?何?
 それは斜面の上に居る2頭のニホンカモシカです。
 あっと思う間も無く、
 シカは斜面を駆け降りて来ました!
 目の前を横切り、
 そのまま山の下に駆け下って行ってしまいました。
 天然記念物とのビックリな出会いでした。
 
 峠が近付いて来ました。
 旧伊勢神隧道はもうすぐです。
 この旧道には、ただ一件だけ民家があります。
 ここにはまだ人が住んでいます。
 肝試しとかで、夜中に騒ぐ輩が来るそうで、
 住人のおじいさんも大変迷惑してます。
 いくらここが心霊スポットとして有名でも、
 絶対!肝試しなんかで来ないでください。
 出ませんよ。
 たとえ何かを見たとしても、
 それはあなたの頭の中のイメージです。残念!
 自分の影にびびる心霊DQN斬り
 いやまじで。
 

 これが明治の隧道の姿です。
 さすが国内で希少な石造りの隧道です。
 この重厚さがたまりませんね。
 左右の法面の草もポイント高しです。
 この写真を写すちょっと前に、
 車で来ていた親子連れが隧道を見ていましたが、
 何か隧道を通るのは恐いらしく、
 Uターンして戻っていってしまいました。
 こんな素晴らしい隧道を恐いなんて、
 心霊スポットの悪しき弊害ですね。
 それと弊害がもうひとつ…
 ポータルに落書きされています。
 文化財になんてことするのよ!

 
 隧道の上に広がる伊勢神峠の森。
 野生動物が生息する自然豊かな森です。
 扁額には「伊世賀美」の文字が…
 字が違いますね。
 これは「伊世(この世は) 美(うつくしく)
 賀(よろこぶべし) 」と言う意味らしいです。
 粋ですね〜
 伊勢神に掛けてこんな綺麗な言葉を刻むなんて
 それ程までこの隧道は期待されたのでしょう。
 2.2mしかない天井の高さも、時代を感じます。
 背の高い人なら天井に手が着きそう。
 
 中から見るとこんな感じ。
 壁がしっとりと濡れています。
 この山は湧水と軟弱地盤のために、
 煉瓦造りになる予定が
 石造りに変更されたと言う事です。
 実にいい景色です。
 明治時代の馬車交通に合わせた規格なので、
 今のレベルから見て狭いのは当たり前ですね。
 ゆえに軽自動車どうしのすれ違いさえ
 出来ません。
 それどころか、軽自動車とバイクですら
 精一杯の予感です。
 
 石の間はしっかり補強してあります。
 おかげでどこも崩れていません。
 照明はあれど、
 もはや機能していなくて真っ暗です。
 電線は通っているのに
 ライトには繋がっていません。
 写真じゃ明るく写っているけど、
 漆黒の闇が広がってます…
 汚名返上のためにも、せめて
 照明ぐらい復活させてほしいものですね。
 それに、落書きも早急に消すべし。
 これは県政の怠慢ですよ。
 
 旧隧道西側に抜けて来ました。
 やっぱり落書きが…

 坑口の周りが二重に石で巻いてあるけど、
 内側の石は後世の補強と言う話ですが、
 私的にはこれがオリジナルの様な気がします。
 それにしても、
 隧道を出ると一気に道幅が広くなります。
 
 こちらの扁額も「伊世賀美」です。
 下には竣工年が記されています。

 「伊勢神」って何だか曰くありげですが、
 峠に伊勢神宮の遥拝所があるため、
 「伊勢拝み」が「伊勢神」になった、
 と言う説があります。
 遥拝所とは、
 お伊勢詣りに行けない人達のために造られた、
 お詣りをする場所です。
 江戸時代まで庶民は、
 自由に旅行が出来なかったからですね。
 
 隧道より少し離れた所にT字路があります。
 直進すれば現道の国道153号線に出られます。
 左に曲がれば、道は南下していき
 県道33号線に合流します。
 T字路と書きましたが、実はもう1本
 旧街道が北側に延びています。
 車が通る事の出来ない狭い道が
 峠に向かって九十九折で登って行きます。
 先程の伊勢神宮の遥拝所もこの上にあります。
 伊勢神隧道に来た際は、
 飯田街道にも思いを馳せて下さい。
 
 旧道も、こちら側はたいした事ありませんね。
 むしろ東側より利用頻度が高いために、
 整備が行き届いていると言うのが本当の所かも。
 たいくつな昭和の雰囲気です。
 こちらは走り易く、かつ距離も短いので
 すぐに現道に出てしまいます。
 やはり見所は東側の旧道部分ですね。
 
 現道に出て来て旧道探索もお終い。
 現実世界に戻って来たみたいです。
 こちらは交通量が多いので、
 合流には注意して下さい。
 ここの西側、つまり左側には
 ドライブイン伊勢神があります。
 食事やトイレ休憩の際は、
 利用してみて下さい。
 昭和時代の雰囲気が残るドライブインです。
 ちなみに右に見える売店?は
 営業していないそうな。
 この地方は五平餅が名物みたいね。
 
 合流ポイントからは、
 新しい伊勢神トンネルが見えます。
 実はこちらの扁額には「伊勢神隧道」とありますが
 旧道の方が「伊世賀美」だけなので
 新しい方が「隧道」なのでしょう。
 でも古い方が隧道で
 新しいのがトンネルって事にしました。
 さて、この伊勢神トンネルは最初
 有料トンネルとして開通しました。
 約10年後には無料開放されましたが、
 左の写真のトラックの横あたりに当時
 料金所がありました。
 道の形が不自然にふくらんでいるのが、
 その名残りなのでしょう。

貴重な明治の隧道はいかがでしたでしょうか?恐い噂が色々流れていますが、
実際は旧道の雰囲気満点の、素晴らしい隧道です。
ちなみに新・伊勢神トンネルの方は、1960年7月1日開通の有料トンネルでした。
料金は普通自動車100円、小型自動車60円、自動二輪30円、原付20円、自転車10円でした。
当初は事業費返済まで有料の予定を、過疎対策の立場から県が肩代わりして
昭和46年(1971)4月1日から無料開放されました。
総工費3億5000万円、総延長は1245mです。
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