【長野県・木祖村-中央本線 旧鳥居トンネル】
長野県の山中に眠る長大廃トンネル。複線化の際に放棄されたトンネルは信じられない状態に…
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 “それ”は凄いコトになっていた。
 まさか、こんなコトになってるなんて。
 古い煉瓦のトンネルを見るたびに想像してた事が
 現実のものになってました。
 それは、ちょっとした恐怖・・・

 まずは地図で位置を確認→■周辺図■

 場所は長野県の木祖村と塩尻市の間にあります。
 国道19号線を木曽福島側から北上して来ると、
 新鳥居トンネルに着きます。
 問題の廃トンネルにはその手前を左折
 1,200m程走ると中央本線にぶつかります。
 でも、線路はずっと下の方。
 ちょっとこれ降りられないよ?
 急斜面を降りなきゃだめなんだろうか。
 あ。下に行く道があった。
 そこを歩いて旧路盤まで来ました。
 ・・・ここで注意をひとつ。
 旧路盤は雑草や木が刈られてますが、
 その切り株が鋭く尖っていて大変危険です。
 うっかりそんな所に倒れたら…
 
 ぶっすり逝きますね。
 冬はよくわかるんだけど、
 夏になって薮が酷くなって来たら、
 雑草に隠れてまさにトラップ!
 横を走ってる電車も気を付けなきゃいけないけど、
 薮に隠れた凶器にも要注意です。
 誰か知らないが余計な事をしたもんです( ̄^ ̄)

 さて、旧路盤を歩いて来ると、
 間もなく廃トンネルに到着します。
 トンネルの前は切り通しで、
 法面には石が積んであります。
 
 近くで見ると、「谷積み」っていう方式です。
 それにへこんだ部分があるけど、
 水を流すためですか?
 へこんでる所はずっと上まで続いてる。
 それにしても、枯れた風景だこと。
 冬なのであたりまえですが。
 
 そんなコトより廃トンネルです。

 うわぁ… 無気味…

 左右から倒木が落ちて来て、
 恐ろしい廃景を作り出してる。
 でも、本当に恐ろしいものは
 この中にあるんですが・・・
 

 煉瓦のトンネルなのにコンクリート?
 このトンネルは明治43年に開通してますが、
 のちに西側の部分が延長されました。
 なのでポータルはコンクリートなのです。
 しかし中身は煉瓦だ。
 う〜ん…中途半端な…
 それに入り口に立ってる杭は何でしょう?
 人が入らないようにするには、間隔広すぎ。
 車のための柵なんだろうか。
 そもそもこんな所に、車が入って来れるの?

 では、入ってみましょう。

 
 ここは延長された部分です。
 左右の壁がコンクリートなのに、
 アーチが煉瓦なんて変な景色ですね。
 煉瓦が黒いのは煤で汚れてるからだろうか。
 真ん中に見える小さな“点”は 向こう側の入り口。
 1,673m向こうにある坑口です。
 と…遠いなぁ
 取り敢えず閉塞はしてないようです。
 でも、何か違和感がある景色に見えませんか?
 アーチの煉瓦に、所々赤い部分があるのは何故。
 

 もう少し進んでから、
 振り返って入り口を見た。
 ちょうど延長された部分の境い目がわかります。
 ぐるりと迫石が縁取っている所を境に
 側壁が石積みに変わってる。

 さらに、アーチの煉瓦もおかしな事に・・・

 足元にも煉瓦の山が・・・

 
 煉瓦が
 崩れてるしっ!
 Σ( ̄□ ̄) 総崩れだわよっっ!

 ええっ Σ( ̄□ ̄)
 マジっすか?

 下にあるのって全部上にあった物なの?
 しかもライトで照らせる範囲は、
 ず〜っと煉瓦の山が続いてますよ。
 
 どうなってるのこれ。
 ここを見ると、4重に巻いてある煉瓦の
 2層目まで崩れたようです。
 それに、真直ぐに積んであるはずの煉瓦が
 波打つように歪んでる。
 これって、すごい圧力が掛かってるって事?
 あまりの圧力に負けて、
 煉瓦がはじき出されたのかな。
 何にしても、尋常ではないよね。
 
 煉瓦の山の上を歩いてみた。
 思いのほか硬い材質で、
 踏むと“ガシャガシャ”という音がします。
 大丈夫かな?
 崩れて来ないかしら?
 まあ、コンクリートで補強されてたみたいだし、
 大丈夫でしょう。
 ―って、コンクリの天井ごと落ちてるよっ!
 ・・・引き返します。
 1,600mもありますしね。
 さすがにこんな場所の往復は無理…
 
 国道の新鳥居トンネルを通 って
 反対側に来ました。
 こっちは国道から近い所にあるので、
 国道上から簡単に見付かります。
 ああ。ありましたね。
 トンネルの上を通ってるのは、
 国道19号線の旧道です。
 ここを左側に行くと国道の旧隧道、
 「鳥居隧道」があります。
 実はこの鳥居峠には、道路・鉄道のトンネルが、
 新旧4本も存在します。
 
 トンネルの前の広場、軌道跡に降りて来ました。
 反対側には川が流れていて、橋の跡があります。
 こっちも煉瓦と石積みだ。
 しかも、こっちも崩れてるよ。
 あの上に乗ったら…
 壊れそう。
 ちなみにここは「第5奈良井川鉄橋」でした。

 そんな事よりトンネルですよ。
 
 こちらはオール煉瓦トンネル。
 しかも、煉瓦5重巻き。
 ものの本によると、地質が悪い場所では、
 煉瓦がより厚くなるそうです。
 地質悪いのかな、ここって。
 まあ、そんな事より
 雑草とか多いけど、ピラスターや笠石まである
 本格派仕様です。
 
 さっそく中に侵入。
 こちらにも柵があったみたい。
 何だか入り放題になってます。

 さて、中の様子はどうだろうか?
 
 うわぁ・・・
 剥がれてるよ。
 こちらも凄い事になってる。
 実際は真っ暗で何も見えないけど、
 写真を撮ってみて、初めてこの色合いがわかる。
 砕けた煉瓦の断面が何とも鮮やか。
 廃墟美とはまさにこの事ね。
 芸術的ですらあります。
 
 ああ、そう言えばこちらは全部煉瓦だ。
 反対側は半分石が積んであったけど、
 待避抗までも繊細な煉瓦造りです。
 よく見ると両ふちに、
 何かが付いていた跡があります。
 下に、付いていた物が落ちていた。
 どうやら磁器のパネルが付いてたみたいです。
 装飾のため?
 飾りと言うより、光を反射させるためじゃない?
 暗闇の中でも待避抗の位置がわかるように。
 
 100mぐらい進んだろうか?
 この辺りは全然大丈夫のようです。
 これが、本来のトンネルの姿ですね。
 でも、今は煤で汚れた黒い壁ですが、
 かつては鮮やかな朱色をしていた訳なんだ。
 いくら綺麗なトンネルでも、
 SLの運転手も乗客も見れないけどね。
 保線作業員ぐらいでしょうか?
 トンネル内部を見れたのって。
 
 旧鳥居トンネルの探索はこれでお終い。
 帰る前にポータルを近くで見てみましょう。
 横の斜面を上がって、帯石と笠石の部分を撮影。
 ここも煉瓦が崩れてます。
 どこもかしこも壊れてるトンネルだ。
 扁額は無いようです。
 枯れた雑草が覆ってるけど、
 夏は植物に埋もれてそう。
 
 トンネルを出た列車は橋を渡り、
 塩尻市方面に走って行きました。
 左側の民家が並んでいる敷地を
 線路が通ってました。
 現在は国道になってる所も
 中央本線の線路でした。
 この先は「奈良井宿」があります。
 奈良井駅には蒸気機関車が保存されてるし、
 江戸から明治の歴史が堪能できますね。

[2006年4月現在]

鳥居峠は、江戸時代には中山道が通っていました。
その当時から難所であった鳥居峠に、明治43年10月5日に中央本線が開通しました。
しかし、急勾配・急曲線の続く悪い線形だったため、
複線化の際に新たなトンネルを掘り、線路が付け替えられました。
奈良井駅と薮原駅の間の区間は廃線、路盤跡の一部は国道として生まれ変わりました。
長大トンネルの「旧鳥居トンネル」の他にもうひとつ、「豊口トンネル」があります。
こちらは、どこかの会社の敷地になっていて、普段は近付けないようですが… 
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