【国道256号線旧道-塞の神隧道】
岐阜県加子母村と付知町の境の、塞(さい)の神峠の旧道には、1966年開通の塞の神隧道があります。
新しい塞の神トンネルが完成するまでの29年間、南北街道の要衝を支えて来ました。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 塞の神隧道は、比較的新しいトンネルですが、
 この旧隧道、一体どんな姿になっているのか?
 すでに閉鎖されているみたいですが、
 それは、いかなる理由からなのか?
 まずは旧道に侵入してみましょう。

 隧道周辺図はこちら→■周辺図■

 付知町側から国道を登ってくると、
 峠の手前に、旧道への分かれ道があります。
 旧道は、現道と直角に交わる様に
 90度曲げられていますが、
 元の道は駐車スペースとして残っています。

 旧道の景色としては、ありがちな感じね。
 別段、通行止という訳ではなさそうなので
 そのまま上に行ってみましょう。
 

 現道から分岐する所から100mぐらいの所で、
 南に向かって林道が延びています。
 その林道もかつての峠越えの道、
 国道256号線の旧々道です。
 塞の神隧道の名前の由来でもある、
 塞の神峠はそちらの旧々道の方にあります。

 さて、車で行けるのもここまでです。
 旧々道が分岐して、すぐの所に
 バリケードが置いてあります。
 隧道の入り口が見えていますね。

 
 背の高い柵で、完全に塞がれてます。
 入り込む隙間もありません。
 ここは民間の業者にでも払い下げられたのか、
 何かの施設になっています。
 「トンネル 乾燥 工場」と大きな看板が掲げてあり
 木材などを乾燥させるための施設のようです。

 ここに来て、一気に廃な雰囲気です。
 (使われているけど…)
 
 扁額には「塞の神ずい道」とあります。
 それにしても、ここだけ見ると
 けっこう不気味な感じ。
 そもそも「塞の神」と言うのは、
 黄泉の国との境に立てられた杖の事で、
 祖神(さえのかみ)の事です。
 はたしてこの隧道はあの世に繋がっているのか?
 

 柵の隙間から覗いてみました。
 コンクリートの状態は良いみたいですが、
 びっしりと緑色の苔がはえています。
 もうちょっときれいにした方がいいんじゃない。
 乾燥工場なのに湿っぽい雰囲気なのは
 いかがなものかと?
 乾燥と言うと木材の乾燥なんでしょうか、
 中を見ると、沢山積んであります。
 サイズ的には、建材より工芸品用かしらね。
 そして手前の方にはトロッコが!
 そう言えば、この辺には林間鉄道が
 走っていたとか、いないとか…

 

 来た方を振り返って、
 隧道から見てみました。
 町名表示から警告標識まで各種取り揃え。
 真ん中あたりの白い看板には
 「速」「注」とあります。
 「速度注意」の度と意が抜けたようですが、
 「速・注」だけでも意味が通じますね。
 新しく出来た塞の神トンネルから見える
 景色と違って、こちらの方がいい雰囲気です。

 
 旧隧道へのアプローチから、
 現トンネルの坑門が見えます。
 この場所はすでに、忘れられた存在でしょう。
 誰からも見られない所にいるのって、
 ちょっといい気分?
 
 隧道は通れないので、現トンネルを通って
 反対側に来ました。
 それにしても、新しいトンネルは広くて
 走りやすいけど、スピードを出す車が多くて
 ある意味旧隧道より危険?

 こちらは現道から分かれていきなり通行止です。
 こちらの方が旧道の雰囲気抜群ですね。
 最初に行った方は、簡単に隧道が見えちゃうので
 何だかネタバレみたいです。
 
 隧道まで上り坂になった、
 こんな道を歩いて行くと、気分が盛り上がります。
 この先には一体、どんな隧道があるのでしょうか?
 (知ってるけど)
 前に見えるカーブを曲がった所に
 隧道が見えるはずです。
 (いえ、さっき見て来たんだけどね)
 さあ、ついに隧道が近付いて来ました。
 (すみません、わざとらしいですね)
 
 おお!隧道が塞がれている!
 (もうやめます…)

 こちら側も、同じように柵で塞がれています。
 あらためて見ると、安っぽいね。
 それにしても「トンネル乾燥工場」って
 トンネルを乾燥させる工場かと思った。
 だって、湿っぽいですもん。
 
 で、同じように木材が積んであります。
 反対側の入り口の光が遠くに見えます。
 しかも、よく見ると
 隧道の真ん中あたりの照明がついていて、
 使用中だというのがわかります。
 この工場の事をネットで調べてみた所、
 ありましたよ「トンネル乾燥工場」の正体が。
 このトンネルの中にレールを敷いて、
 先の写真にあったトロッコに木材を積んで
 トンネルの中をゆっくり移動させ、
 その間に木材を乾燥させるそうです。
 林間鉄道は関係ありませんでしたね。
[2004年7月現在]

「トンネル乾燥工場」についてもう少し詳しい話をすると、塞の神トンネル開通後の、塞の神隧道の活用法を
地元の商工会青年部で話し合った時、隧道に「木材乾燥列車を走らせては」との提案がありました。
一般的な乾燥施設を作るより、既存のトンネルを使用した方が、低コストになると言う事で、
この「木材乾燥列車計画」はスタートしました。
列車を走らせると言っても、トンネルの傾斜を利用して、ゆっくり降ろすだけのものだそうです。
トンネル乾燥の計画が始まったのは2000年なので、もう4年経っている事になりますが、
上の写真を見てもレールなど敷かれてなく、トロッコも使われている様子がありません。
どうやらこの計画自体、頓挫したみたいです。
本格的に事業としてスタートする前に、資金難にでもなったのでしょうか?
現在、隧道は加子母村と付知町の管理下にありますが、あの木材達は湿っぽい隧道に捨て置かれています。
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