【国道362号線-本坂隧道】
愛知県と静岡県の間にある本坂峠。そこには現在有料道路「本坂トンネル」があり、簡単に越えられます。
しかし、峠直下の大正時代の隧道、本坂隧道は今でも現役の国道です。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 愛知県の東、豊橋市の山中にある
 大正の隧道、「本坂隧道」。
 なかなか立派な煉瓦の隧道だと言います。
 これは必見ですね。
 …でも現状は…
 ひどいよ・・・(´Д`)
 
  取り敢えずその場所はココ→■周辺図■

 あまり行く機会がない愛知県東部ですが、
 大正時代の煉瓦隧道があると言うので、
 今回は豊橋市に行ってきました。
 その隧道は旧道にあるので、
 現道から横にそれて旧道に入ります。
 画面右側のガードレールが現道で、
 左の下って行く道が旧道・・・
 って、あれ? ここって旧道だよね?
 地図を見ると今でも国道表示ですよ。
 しかも現地には“キロポスト”までありました。
 現道?が有料道路なので、
 旧道って言うのは違うかも?
 よくわかりません。
 そうだ “旧道”って書けばいいかも。
 
 どっちにしても、狭い酷道ですけどね。
 “旧道”は一旦、有料道路をくぐり、
 ヘアピンカーブで向きを変え、
 今度は本坂トンネルの上を越えて行きます。
 古い峠道なだけあって、視界もきかないです。
 途中にはこんなガードレールが壊れた所も…
 どうやったらカーブの内側が壊れるのよ?
 それに、ちょっとわかりづらいけど、
 ガードレールに沢山の落書きがある。
 それがずぅ〜っと続いてます。
 なんなのよ?
 
 間もなく隧道に到着。
 立派なお姿です。
 さすが大正時代の煉瓦隧道。
 堂々たるものです。
 1915年、大正4年の建設で、
 ピラスターや笠石や、立派な扁額をそなえてます。
 あの「伊勢神隧道」と並び称されるべき物ですね。
 (あれ?どこかで同じ事を言ったような…)

 まず、隧道の周辺を見てみましょう。
 
 隧道手前には、謎の建物があります。
 コンクリート製の、何かの倉庫だろうか?
 電々公社関係の物らしいです。
 それにしても小さい。
 扉は開きそうにありません。
 でも、なんか、青とか赤とか色付いてる?
 
 “旧道”からは、山道も分かれています。
 ここを進めば本坂峠に行けるようです。
 峠には旧街道、通称「姫街道」が通ってますが、
 今回は隧道が目的なのでスルーします。
 興味のある人は行ってみて。
 
 隧道の右上の所にも、何か穴があります。
 なんだろう?
 これは水を流す溝ですね。
 これも一種の水路隧道なのかな。

 それでは、隧道の中に入ってみましょう。
 
 外側はオリジナルの煉瓦のままですが、
 中は鉄板で補強してあります。
 やっぱり古くなってくると・・・
 って、なによこれ!?
 らくがき〜?
 ひどい! ぐちゃぐちゃだわ!
 近代土木遺産になんて事するんだ!!!!
 ああ、そう言えばここって、
 心霊スポットでもあったんだ。
 夜中に肝試しに来た連中のしわざだね。
 古いトンネルを見れば、すぐ幽霊と結び付ける
 お馬鹿な心霊ファンには困ったもんです。
 
 反対側に出ました。
 こちらは静岡県の坑門です。
 愛知県側とデザインは同じ。
 しかもこちらにも落書きが…
 そう言えばこの落書きって、猥褻な言葉より
 カップルの名前らしきものの方が多かった。
 どういう現象?
 それに“旧道”沿いのガードレールや
 コンクリの倉庫の落書きも
 馬鹿共の仕業なんだね。
 
 それともうひとつ気になるものが…
 側面から天井にかけて、煉瓦にひびがある。
 煉瓦の目地にそって割れています。
 これって、隧道の上の山がずれたのかも。
 落書きも消さないぐらいなので、
 補修すらされてません。
 大丈夫なのか?
 いや、大丈夫じゃないよ。
 その内落ちて来るよ。
 あの旧鳥居トンネルみたいに…

 これが現役隧道なのが信じられません。
 心霊なんかより、はるかに恐いよ。
 
 隧道の前の法面の石積みですが、
 何か違和感があります。
 やけに影が目立つよね。
 これって、石がずれてる?
 いや、押し出されている!
 こんな風にならないための石垣なのに、
 大変な事になってます。
 
 向い側の石積みの裏には、
 細い道が延びて行きます。
 ここからでも峠に行けるのだろうか?
 石垣の前の黄色い物は、
 電力会社が立てた道しるべだ。
 どうやらこの上を横断してる
 送電線の点検のための道みたいです。

 さて、隧道探索はこれまで。
 今度は峠道を下って、浜名湖方面に行きます。
 
 相変わらず細い道が続いていきます。
 なかなかに酷な道ですが、
 旧街道時代はもっと大変だったそうです。
 1度峠を越えた人は、2度目はごめんだ、
 なんて思うほどの難所だったとか。
 そんな旧街道が“旧道”と交差してます。
 先程も出て来た「姫街道」です。
 ふもとから一気に峠を目指すルートなので、
 急な坂道になってます。
 
 途中、茶畑を横目に見ながら
 “旧道”を下ってくると有料道路に合流。
 有料だけあって、快適そうな道です。
 奥に見えるのが本坂トンネル。
 本坂峠は、右上の山がちょっとへこんだ所です。
 こちらの方が景色がきれいで、
 表玄関って感じ。
 っていう事は、私は裏口から来たってか?
[2006年3月現在]

本坂峠を越える国道362号線は、昭和50年4月に主要地方道から国道に昇格しました。
隧道は大正4年開通。全長205m。昭和50年には新しい「本坂トンネル」が出来ました。全長は2049m。
古い国道の方は現在、通行量が少なく、ひなびた山道の雰囲気です。
それにもうひとつの峠越えの道、東海道の脇往還である姫街道が通ってます。
“姫”街道の名前には諸説あり、女性が厳しい東海道の関所を避けて、この街道を通 ったからとか、
“古い”と言う意味の“ヒネ”から転訛したと言う説があります。
どんな由来であれ、女性の往来が多かったのは事実であったようです。

本坂トンネルは、2008年3月31日に無料開放されました。
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