【国道158号線旧道-旧・山吹トンネル】
長野県松本市を流れる梓川・梓川渓谷には、多くの旧道が点在しています。
その中のひとつ、現・山吹トンネルにより旧道化した場所にある旧トンネルを見て来ました。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 地形図で見ると
 もう、そこらじゅうに旧道がある。
 しかも、ほとんどの所が点線だよ。
 これは自分の目で確認しなくては(≧▽≦)
 …まずは、隧道マークがある旧道に
 行ってみよう(≧▽≦)!

 その旧トンネルはここだ!→■周辺図■

 梓川渓谷って言うよりは、
 松本市から上高地までの通り道と言った方が
 わかりやすいでしょうか?
 上高地といえばバリバリの有名観光地。
 それなのに、そこへ行く国道158号線は
 微妙に走りにくかったりして・・・
 さて、そんなプチ酷道から
 脇道に入らないといけないんですが、
 ちょっとわかりづらい。
 国道から別れる県道は違う所に行っちゃいます。
 土産物屋の駐車場みたいに見える道が正解。
 で、こんな場所に出て来ます。

 
 でもここって、本当に国道の旧道??
 林道みたいにも見える。
 なんだかきれいに整備されてるし・・・
 おおっと! 標識だ。
 「路面凸凹あり」と「徐行」だ。
 もうこれで国道の旧道確定ですね。
 ね? ね?
 途中、採石場らしき所への道があったので、
 そのために整備されてたのかも?
 でも車の通った跡が無かったけど・・・
 
 な〜んだ、楽な旧道歩きだねぇ。
 道に沢山の蝶がいたのが印象的だった。
 私が近付くとパッと散って可愛い。

 な〜んて歩いていくと、
 旧道は廃道の様相に・・・
 薮・落石・倒木・崖崩れ。
 でもまだ大丈夫。
 廃道としてイケテル状態です。
 道が無くなる程の崩落はありません。
 
 さらに歩くと、ようやく現道の橋に着きました。
 旧道は現道の下をくぐって反対側に行きます。
 旧・山吹トンネルは
 あの橋の向うにあるはずです。

 路面が土石流か何かで削られて
 小さな川になってる所があったりしたが、
 なんとか橋の下に到着しました。
 

 雑草が酷くなってきて、
 道がよく見えなくなってきた。
 いや、道が無い?
 いやいや、あれは・・・
 トンネルだ!!
 こんなトコであっさり見付かった。

 
 ポータルはコンクリート。
 扁額はひかえめ。
 よくあるコンクリトンネルだけど、
 独特な雰囲気があります。
 中は真っ暗だけど、塞がってる?
 中に入る前に、
 もう少し周りも見てみましょう。
 右端にちらっと写ってるけど、
 すごい事になってる。
 

 滝です
 荒々しい岩肌を水が流れ落ちて
 立派な滝になってます。
 これって自然の滝でしょうか?
 トンネルのすぐ前にあるので、
 路面が川になってます。
 鉄分が含まれてるのか、岩が茶色になってる。
 上の橋が現道の「栂桜橋」です。
 「つがさくらはし」なのかな?
 “方杖鋼ラーメン橋”って種類ですね。

 
 トンネルの上からツノが生えてるみたい。
 シシ神か?
 扁額には「山吹トンネル」の名が…
 先程から“隧道”じゃなくて、
 “トンネル”と言ってるのはこのためですね。
 まあ、どうでもイイ事ですが。

 それにしても、いい雰囲気です。
 今日はこれだけでお腹いっぱい?
 
 いやいや、中には入っとかないと。
 塞がってるかもしれないけど一応ね。
 外の滝のおかげで
 トンネル内部は水没してるかもって思ったけど
 どうやら大丈夫みたいです。
 でも、あれ? 何か不吉な影が・・・
 壁の両側に黒いモノが・・・
 
 中をフラッシュを使って撮ると
 トンでも無いモノが写ってる。
 壁が剥がれてる。
 いや、剥がれてるというより、
 割れてる?
 なんか、あちこち“ひび”だらけだ。
 それに白いのは、コンクリから溶け出した
 カルシウム分じゃないの?
  このトンネル・・・壊れてる( ̄□ ̄;)
 でも、そんなにヤバイ感じはしないねぇ。
 もしかして危機感がマヒしてる?
 
 割れた所を見ると、
 コンクリートは結構薄そうだ。
 中には丸い玉砂利がぎっしり詰まってる。
 ちょっとこのトンネルの事を調べてみましょう。

 >全長156.6m 高さ3.8m 幅2.7m
 >竣工年・昭和2年
 >素堀り

 昭和2年とは古い。しかも素堀りだったの?
 じゃあこのコンクリは後から造ったモノ?
 

 型枠の跡がきれいなので、
 新しめのものかもしれませんが・・・
 なにこれ?
 コンクリの割れ目から木材が見えてる。
 鉄筋の替わり?
 いや、まさかね。

 白っぽいのや赤っぽいのが染み出てるのが、
 まるで・・・ 地下鉄の通路の壁みたいだ。
 ほら、昔の壁がタイル張りだった頃は、
 こんな風に赤いどろどろが・・・

 
 このトンネルは塞がれてるかもって
 思ったけれど、
 途中でカーブをしてたのでした。
 そういえば、右下の四角いのは何だろう?

 ちなみに振り返って撮ってます。
 この辺のコンクリは、
 きれいな状態です。
 
 156mぐらいなので、
 結局ライトを使わずに抜けれました。

 さあ、トンネルを抜けた反対側は
 どんな景色なのでしょう?
 
 こっちは陽当たりがイイので、
 明る〜く写せます。
 アーチの半周分の鉄パイプがくっついてる。
 電源のコードが通ってるのかな?
 中に照明のたぐいは無かったけど・・・

 いったい廃止されてから
 何年たってるのでしょう?
 落石に生える雑草がいい雰囲気です。
 
 反対側の扁額も、こじんまりとしてる。
 鉄製だろうか?
 錆びてるみたいです。

 それに・・・

 亀裂が一直線に走ってる。
 
 今回のベストショット。
 これは別窓で他より大きな画像が見れます。
 廃トンネル・渓谷・現道橋が
 一つの画面に入ってる。
 路肩の崩落した所に、
 ブルーシートが掛けられてます。
 これは旧道じゃなく、
 渓谷の方を守るためなんでしょうか?
 現道の「栂桜橋」からは、
 このブルーシートがちらっと見えます。
 
 さて、トンネルの先はどうなってるのだろう?
 少し行くと薮に埋もれてしまいました。
 旧道はまだまだ続きますが、
 この先は現道につながって無いようなので、
 探索はここまで。

 薮と言っても、一面に白い花が咲いています。

[2008年7月現在]

国道158号線の松本市の梓川沿いの区間は、幾つものダムが連なっています。
そのダムの建設に使われた道路が、そのまま国道になっているそうです。
それにこの国道158号線の周辺は、堆積岩類(チャート・砂岩等)から成り、断層が多く走っています。
そのため土砂崩れ災害が起き易く、梓湖左岸の親子滝トンネルがある辺りは、
大規模な地すべり性崩壊の跡地があり、奈川渡ダムのダム湖の梓湖が出来る以前は、
崩落した斜面を避けるため、国道は梓川の右岸を通っていました。
北には安房トンネルの水蒸気爆発事故を引き起こした「焼岳」もあり、
常に災害にさらされている国道と言えるでしょう。
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