【愛知県・豊田市-豊田大橋】
豊田市の中心地より東に架かる個性的な橋。かの建築家・黒川紀章氏が設計した物です。
豊田スタジアムと並んで、特異な景観を作り出しています。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 豊田市の矢作川にとんでもない格好をした
 橋が架かってるのを思い出したので、
 さっそく現地に向いました。
 そこで見たのは
 前代未聞のとんでもない姿をした橋でした。

 とんでもない橋はここ→■周辺図■

 ここから見ても何やらただならぬ
 景色が広がってます。
 円い石に「豊田大橋」って彫ってあるのが
 どうやら親柱になるみたいです。
 でも親柱から本体まで遠すぎです。
 70mぐらいありそう…
 それに照明設備も変わったデザインです。
 その足元にある鉢植えも変わってる。
 それもそのはず、この豊田大橋は
 黒川紀章という建築家が設計したのです。

■このレポートの写真をクリックすると、
 原寸のものが別窓で開きます。
 
 橋を見に行く前に、黒川紀章氏と
 豊田大橋についてのうんちくをひとつ…
 黒川紀章氏は愛知県生まれの建築家で
 東京大学で大学院博士課程を修了されてます。
 すごいですね。
 豊田スタジアムも氏の作品です。
 こちらも、物凄い姿をしてます。
 さて、豊田大橋は動物の骨を
 モチーフにしてるそうですが、
 確かにこれなんか大腿骨の関節みたい。
 
 途中には窓が開いてます。
 なんとも有機的なデザインです。
 向こうには隣の国道301号線に架かる橋、
 「久澄橋」が見えます。
 
 本体に辿り着きました。
 “バスケットハンドル型ニールセンローゼ橋”
 という形式です。
 とにかくデカイ!
 動物の骨って言うより
 「使徒」みたいだ( ̄▽ ̄)
 あの2体同時攻撃の。
 

 バスケットハンドル型とはよく言ったもんだ。
 バスケットの“とって”みたいな
 形をしてます。
 でもここは一筋縄ではいきません。
 真ん中に穴が開いてます。
 ケーブルも自転車のスポークみたいだ。
 さすが一流建築家が設計しただけあります。
 継ぎ目のデザインにまで、
 神経が行き届いてます。

 
 車道の横の歩道の、さらに外側には
 展望台のような広場があります。
 そこの通路には橋を支えるケーブルが
 ずらりと並んでます。
 橋とは思えない景色です。
 その向こうに見えてる“つの”のある建物が
 「豊田スタジアム」です。
 

 バスケットハンドルのアーチにも
 大きな穴が開いてます。
 手間掛かってそう。
 ニールセンローゼ橋は設計が難しいそうですが、
 これは超絶難しそう( ̄▽ ̄)
 だって穴開いてるし。

 
 すべてがデザインされた空間です。
 本来ガードレールがある所にも、
 半円形の窓のある仕切りになっていたり、
 歩道の上にも図形がペイントされてる。
 それにこの橋って、車道と歩道が
 同じくらいの幅がある。
 豊田スタジアムへのお客さんのためですか?
 
 ここでちょっと、お隣の「久澄橋」の方を
 見てみましょう。
 読み方は「きゅうちょうばし」です。
 こちらも個性的な姿をしてます。
 さしずめ「2径間単弦ローゼ橋」でしょうか?
 デザインテーマが「日の出」なのでアーチです。
 橋桁を支える支柱が放射状になっていて
 なかなか珍しいです。
 これはこれで結構苦労があったそうですが、
 豊田大橋の横に並ぶと
 ちょっと地味に見えてしまいます。
 
 ここはアーチとアーチの間の
 橋脚の上の踊り場みたいな所です。
 この橋が他と違うのは、
 見せる事を考えて造られてる事です。
 右の斜の板状のパーツはアーチの一部。
 いや〜〜 すごいなぁ
 実際の現場で見ると、
 大きなパーツに囲まれた空間は、
 橋の上だというのを忘れる程です。
 
 もちろん下に降りてみました。
 面白い事に、橋桁の下を通って
 反対側に行けるようになってます。
 こういうのって散策する人の事を
 考えてのものでしょうか?

 それにこの橋で重要な部分があります。
 アーチを支える物。
 “支承(ししょう)”という部分です。
 
 こんな物であんな大きなアーチを支えてるなんて
 信じられませんね。
 これだけで見ると大きな部品だけど、
 橋全体からすればとても小さな部品ですよ。
 よく見ると、左右に移動出来るようになってる。
 橋に重い物が乗った時に橋桁がたわむと、
 アーチが下に引っ張られますね。
 引っ張られたアーチの端っこは
 左右に広がります。
 その時に広がった分を逃がす構造なのでしょう。
 左右に移動出来ると言っても、
 何十センチって程だけど…
 
 橋脚の上から橋桁の裏側が見えます。
 なんという複雑さ!
 まるで橋桁に脚が生えてるみたい。
 それにこの橋桁は“箱形桁”ってやつですか?
 
 橋脚の上からアーチを見上げてみました。
 のしかかるようなアーチの迫力に
 圧倒されます。
 
 橋を渡ってスタジアム側に来ました。
 そこの階段を降りて、
 矢作川の河川敷に出ました。
 目の前にある平らなパーツは、
 飾りのための物のようです。
 いや、ひょっとしたら重要な部品なのかも?
 
 さっきまで居た橋脚が奥に見えますが、
 橋桁の幅より倍以上広いのは、
 ちょっと他所には無いですね。
 
 最後に全景を。
 この橋のすごい所は、
 どこから見ても一部の隙も無く
 デザインされているって事です。
 このデザインは、真っ当な橋の設計者から見たら
 すごい邪道かもしれないですね。
 でも、この橋を見てたら
 「現代のガウディ」って思えてきた。
 それぐらいのインパクトがあります。
 これはぜひ自分の目で見てほしいです。

[2005年12月現在]

豊田大橋は平成11年に出来た、2連のバスケットハンドル型ニールセンローゼ橋です。
橋全体の長さが474.5mで、アーチ2つが280m、2径間連続鋼床版箱桁橋が116m、
単純鋼床版箱桁橋が78.5mになります。使った鉄の重さは6,180トン。建設費は約99億円。
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