【長野県・飯田市上村-須沢橋】
長野県は飯田市の山奥、下栗の里に架かる吊り橋。天空の集落の下にある橋はいかなる姿か?
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 「橋コレクション」というサイトの
 書き込みで知った物件です。
 なんか、林道を遡らねば行けないみたいな?
 長野県の秘境に架かる吊り橋。
 これはゼヒ見に行かねば。
 地図もあるでよ→■周辺図■

 天龍村から国道418号線、
 国道152号線を通り、木沢まで来ました。
 「梨元ていしゃば」という食堂が見えたら
 右折して橋を渡ります。
 砕石場の横を抜けて、
 遠山川沿いを走ると…
 あれ? 道が削れてる?
 っていうか、増水した時に流されたんだ!
 でもバイクなので大丈夫。
 この先の林道を進めば、橋まで行けるはず。

廃吊り橋

 アスファルトが途切れてからは、
 車のタイヤが通る部分だけ
 コンクリートの舗装になりました。
 これがまた走りにくい。
 落石だらけで、川に落ちたら大変なので
 途中で断念して戻って来ました。
 そしたら上の写真の場所から、
 少し行った所に廃吊り橋を発見。
 床板が全部無くなってます。
 渡るどころか、近づく事も出来ませんね。

 
 さて、どうしよう?
 でも大丈夫。
 山の上には集落を結ぶ道が通ってます。
 そこを通れば、橋の近くまで行けます。
 じゃあ初めからそこを使えって?
 ごもっとも。実にごもっともです。
 ちょっと林道を通ってみたかったんですよ…
 で、仕切り直して山の上に来ました。
 山の中腹からはこんな絶景が!
 あれに見えるは、下栗の集落のひとつ。
 雪山は「聖岳」だそうです。
 
 上の写真の集落の手前で、
 二股の分かれ道を右に行き、
 ずっと下って行きます。
 なんと!150m程の高さを一気にですよ!
 急坂を延々と下ると、
 遠山川まで来ました。
 目的の橋が見えましたよ!
 (写真に写ってますが、よく見えない)
 ここで再び林道を行きます。
 目の前の道がその林道ですが、
 ここらはきれいなもんです。
 
 とは言え、さっきみたいな
 荒れた状態になってたらイヤなので、
 バイクを置いて歩いて行きます。
 さて、知ってる人は知ってる、
 知らない人は気になる「梨元ていしゃば
 ていしゃばとは、林鉄の停車場の事です。
 この林道にはかつて、
 遠山森林鉄道の線路がありました。
 さっきの食堂も森林鉄道の停車場跡です。
 駐車場に林鉄の車輌が展示してあります。
 

 少し歩くと広い場所に出ました。
 建物が何軒か建ってます。
 何かの作業所?
 林鉄跡で突然の広い場所…
 たぶんここも停車場跡ですね。
 「須沢停車場」だって。
 帰ってから調べてみました 。

 ここを過ぎれば、橋まであとわずか。

須沢橋

 来ました。
 吊り橋への入口です。
 こんな親切な札がありましたよ。
 「須沢橋(入口)木沢活性化」
 とあります。
 これは、ウェルカムってコト?
 
 須沢橋へのアプローチがこちら。
 右側の斜面が道ですね。
 林道には、2本のコンクリの舗装が見える。
 さっきはこんなきれいじゃなかったよ。
 この先にも人家があるので、
 そのために整備されているのかも?
 
 さ〜〜〜て。
 林道からも橋が見えます。
 山奥にある吊り橋だというので、
 くたびれた木造の橋かと思ったけど、
 オール金属製の吊り橋だよ。
 これは実用的な橋なのかな?
 
 立派な橋桁です。
 多少期待はずれな感はありますが、
 まあ、渡ってみましょう。
 ああ。そう言えば、
 この橋の事をネットで調べたら
 人が渡ってる画像があったけど、
 10人ぐらい渡ってた…!
 マジで?
 そんなに頑丈なんだ。
 
 歩くと普通に揺れますね。
 特にすごく揺れるわけじゃありません。
 なので、普通に歩きます。
 補剛トラスとかは無いけど、
 ガッチリしてます。
 振り返って林道側を見てます。
 
 とは言え、
 この素晴らしいロケーションに架かる
 長い吊り橋は萌えますよ。
 しかも、けっこう高い。
 揺れなくてもスリルがあります。
 
 床は金属製吊り橋ではお馴染みの
 エキスパンドメタルです。
 おかげで下の川がよく見える。
 今、高い所にいるのが分かって
 ゾッとしますよ。
 
 あまり揺れないので、
 ひょいひょいと渡って来ました。
 あと少しで対岸です。
 渡った先に何があるのかと思えば
 作業場みたいな小屋があった。
 林鉄の停車場が近くにあるし、
 やはり林業関係の物かしら?
 
 主塔もこうやって
 見上げるアングルだと、
 かなり高く見える。
 こんなに立派な橋なのは、
 大勢の人が渡るのが前提だからかな?
 100人…じゃなくて
 10人乗っても大丈夫だしね。
 (保証はしませんが( ̄▽ ̄)
 
 アンカレージはあんがい小さいです。
 まあ、大部分が地面の下なんでしょう。
 それと、2本の金属製の長いモノ…
 モノレールの軌道ですよ。
 これって、モノラックとも言われる
 モノレールの発着場じゃないですか。
 ここから林業作業者が、
 山に登って行く訳ですね。
 空中写真を見ると、この上の方に
 数軒の民家が写ってるので、
 そこの住人も使ってるかも?
 
 広々とした場所なので、
 橋の斜めからの写真が撮れます。
 この橋が観光地にあっても
 何でも無い景色だけど、
 このロケーションでは最高ですよ。
 
 主塔の下は「ピン支承」と言う
 回る支承です。
 回ると言っても、
 クルクル回る訳じゃありませんよ。
 橋桁が重さで下がると、
 引っぱられて前後に動くのでしょう。
 
 橋が高い所に架かってるので、
 下には行けないかと思ったけど、
 河原に行けました。
 赤い橋が青空に映えます。
 今日は晴れてよかった。
 途中の林道での無駄な努力も報われます。

[2012年4月現在]


須沢の集落から対岸に渡る為の吊り橋「須沢橋」。
林業用のモノレールの発着場があるので、作業をする人が使う橋なのでしょう。
それと、橋を渡った先を上がって行くと、夕日天伯と言う社があり、
9月の第2日曜日には、例祭が執り行われるそうです。
南信州遠山郷」というサイトでは、
「禰宜が御神酒を供え、おはらいをし祝詞をあげると、全員が「トーボー神、エーミー神、
ハーライターマエ、キヨメターマエ」と唱え、これを二回繰り返し終わりますが、少し前ま
では『四つ舞』を献納するほど賑やかだったということです。」とあります。
遠山のあたりには、◯◯天白(伯)というのが各所にあり、天白信仰の社だそうです。
“天白”という神様は、謎の多い由来が不明の神様だそうですが、古い歴史を持つ伯家神道の
三種祓いと言う修法では、 「とほかみ えみため 祓い給え 清め給う」と唱えます。
何か関係がありそうですが、「とほかみ えみため」が幕末から明治にかけて流行したと言い、
こういう流行物を取り入れつつ、形作られていったのかもしれません。
ちなみに天白は、山の神・田の神・水の神であり、天狗やカッパとも考えられてるそうです。
いずれにせよ、厳しい山の生活から生まれた信仰であるのは確かなようです。
この橋も、そんな山の暮らしを支える物のひとつである訳です。

参考文献:菅田正昭著「言霊の宇宙へ」たま出版

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