【国道8号線旧道-佐和山隧道】
滋賀県彦根市の山の中にひっそりと存在する煉瓦の隧道。大正13年に国道8号線の旧道上に造られた物です。
現在は閉塞・水没と惨憺たる状態だそうです。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 ここはあの「村田」さんが造った
 最初の隧道だそうです。
 という事は「横山隧道」や「賤ヶ岳隧道」と
 似たデザインなんでしょうか?
 藪の向こうに隠された大正時代の隧道。
 さて、どんな姿なのか…

 まずは地図で位置を確認→■周辺図■

 彦根市の東側を通る
 国道8号線と306号線の交わる所より、
 北へ走ると現れるのが、
 現道のトンネル「佐和山トンネル」。
 横の大きなお城が目印。
 っていうか“城”???
 横に長いし厚みもありません。
 佐和山と言えば、石田三成の居城
 佐和山城が有名です。
 その佐和山城は跡形もないはずです。
 じゃあこれはなに?
 しかも写真に写ってない所には
 五重塔や金閣寺まであります!怪しすぎます!
 
 どうやらこれは個人が造った物で、
 「佐和山遊園」って言うそうです。
 外から見るだけでも、
 そのパラダイスぶりには、
 頭がくらくらします。
 まあそちらは軽くスルーして、
 佐和山トンネルの方を見てみましょう。
 2つ並んでますが、右が国道
 左が歩行者用トンネルです。
 これと大正の隧道を合わせれば
 3本のトンネルがある事になります。
 大正の佐和山隧道には、
 上の写真の左側に写ってる細い道を行きます。
 
 その細い道もすぐにこんな状態に。
 目の前に民家があるのに、
 すでに廃道の雰囲気満点です。
 もしかしてこの家って廃屋ですか?
 まだ新しめで、廃墟とは言えないけど、
 雨戸が閉まっていて、
 人の気配もありません。
 いったい住人がいなくなって
 何年経つのやら…
 ちょっと勿体無いですね。
 
 国道の旧道とは思えない
 まるで裏山へ行くだけの道に見えます。
 でもこの山は、戦国武将・石田三成の
 佐和山城があった歴史の舞台です。
 ここが歴史的にも交通の要衝としても
 重要な場所だった訳です。
 この景色とはすごいギャップだ。

 廃屋の横を通り過ぎて、
 間もなく・・・
 

 藪と倒れる竹の嵐。
 しかも路面はどろどろ…
 さらに道を塞ぐ廃車体。
 1台どころか4〜5台あります。
 すべて古い自動車で、
 70年代あたりの物ばかりです。
 ウィンドウも苔むしていて
 中が見えない…
 ちょっと不気味…

 ここを行けってか?

 
 ずるずるの廃道を歩いて来ると、
 藪の向こうに出てきたのは
 目的の「佐和山隧道」!
 聞きしに勝るスゴイ場所にある。
 

 緑の風景の中に赤い煉瓦は鮮烈です。
 山の中に埋もれるように
 隧道が存在してます。
 以前レポートした横山隧道なんかと
 同じデザインの坑門です。
 石と煉瓦のコラボレーション。
 ここから見ても問題無いようですが、
 やっぱり狭いのが、
 捨てられた理由でしょうか?

 
 扁額は何だか読めない文字が
 彫ってあります。
 篆書(てんしょ)と言うものです。
 左側の2文字は「門妙」でしょうか?
 右端の文字は「宮」かもです。
 現代的に並べ変えると
 「宮■妙門」でしょうか?
 でも↑この一文字が不明。
 難しくてよくわかりませんね。
 
 うわ…
 やっぱり水没してるよ。
 光の加減なのか青緑色をしてます。
 でも水面近くは白っぽいので 妙な雰囲気です。
 外国にある「青の洞窟」って
 こんな感じだろうか。
 竹が浮いてます。
 
 中も全体が煉瓦が積まれてますが、
 白っぽい所がある。
 白化ってやつですか?
 煉瓦が古くなってやばい状態な訳です。
 この隧道は途中で 埋められてるそうですが、
 ここからじゃ見えません。
 水は深くて、水中を歩いて行くには、
 かなり無理がありそうです。
 でもここをゴムボートで越えた人が居ます。
 うそのような本当の話。
 
 なにげなく上を見たら・・・
 亀裂が!
 しかもズレてる!!
 Σ( ̄□ ̄)
 煉瓦と煉瓦が外れたというより、
 大きな力が一気に加わって
 破断した、といった感じです。
 地震でしょうか?
 阪神淡路大震災の時かも。
 彦根市でも震度5もあったらしいですから。
 
 今水没してない所に居るけど、
 後ろの壁を見たら
 ここまで亀裂が走ってました。
 これは正直怖い。
 いつ天井の煉瓦が崩れても
 おかしくない状態です。
 早く出た方がいいかな?
 
 出来るだけ中に入って閉塞地点を撮影。
 閉塞地点が見えるかは微妙なトコロ…
 それにしても、おどろおどろしい。
 実際には真っ暗で、
 こんな風には見えないけどね。

 では、頭の上から煉瓦が降ってこない内に
 さっさと退散します。
 
 水没と閉塞のダブルパンチで
 通り抜ける事が出来ないので、
 反対側から行ってみることにします。
 歩行者用トンネルを抜けて来ました。
 でも隧道の出口があるはずの西側には
 高い法面があって、
 それらしい場所が発見できません。
 これはこまった。こまったさんです。
 かの「旧道倶楽部」によると、
 歩行者用トンネルの右上の山の中に
 旧隧道のポータルが埋もれてるそうです。
 そりゃわからないわ。
[2006年1月現在]

佐和山隧道は、滋賀県で数々の素晴らしい隧道を設計した、村田鶴最初の作品です。
この隧道と「横山隧道」「賎ヶ岳隧道」は、
当時の煉瓦隧道としては一般的なスタイルで造られています。
しかし、横山・賎ヶ岳の両隧道は、旧道になっても今だに現役なのですが、
一体どんな理由があって、佐和山隧道は捨てられてしまったのでしょう?
滋賀の交通の要を担った隧道にしては、あまりな扱いだと思えてしまいます。
例の佐和山遊園は石田三成の信奉者が造ったそうですが、三成の怨念の所為でしょうか( ̄▽ ̄)
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