【静岡県・佐久間-龍王ごんげん橋】
静岡県浜松市佐久間町佐久間の山の中、県道290号線から遊歩道を下りた先に架かる橋。
佐久間ダムからは、山をはさんだ東側にあります。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 2012年は辰年です。( ̄▽ ̄)
 「龍」の字が入った橋があったので、
 2012年の最初のレポートはここ、
 静岡県の「龍王ごんげん橋」です。
 でも見に行ったのは4月だ。
 時期はずしたけど… どうぞ。

 天龍佐久間の国道152号線沿いには
 たくさん吊り橋があります。
 その西側の県道の方には無いだろうか?
 で、調べてみたら
 よさげな吊り橋が山の中に…
 これは行ってみなければ。
 で、来ました。
 さすが3ケタ県道。狭いです。
 でも、車が置けるスペースがあるので安心。
 ここが「龍王ごんげん橋」の入口です。
 
 遊歩道の先にあるのですが…
 こんなに急坂だったの?
 地図では分からなかったけど、
 ずーー〜〜〜〜っと急階段。
 帰りが大変だわよ。
 まあ、降りてみましょう。
 こんな急坂を200mほど下ると
 川に到着します。
 
 観光用の橋らしく
 デザインが凝ってます。
 龍王の名は龍王渕の伝説に由来します。
  龍王渕の龍王に雨乞いしたら雨が降った。
  あと、お椀を貸してくれた。
 と言う伝説です。
 目の前の石碑みたいなのが銘板です。
 伝説にちなんでお椀の絵が描いてあります。
 
 静岡県に多くある
 「そろばん板」の吊り橋です。
 何本もある敷線の上に並んでます。
 これは… ゆれそうだ…
 
 横向きに並んだ板…と言うか棒?
 これが「そろばん板」です。
 敷線の上に並んでる様子が
 そろばんを連想させるからでしょうか。
 おや? 何か色がついてる?
 絵、ですね。
 龍の絵が描いてあったようです。
 残念ながら、ほとんど消えてますよ。
 
 主塔にはレリーフが飾られてます。
 “見せる”吊り橋ですね。
 今だいたい中間付近にいますが、
 予想通り揺れます。
 ゆらゆらフワフワ揺れます。
 けっこう楽しいです。
 吊り橋が苦手な人には大変だ。
 
 さて、下を流れる川の景色はどうでしょう?
 すごいと言う程じゃないけど、
 いい景色です。
 河内川の流れですね。
 伝説の地・龍王渕はこの反対側になります。
 え? 写真は無いのかって?
 すみません〜。橋の写真を撮って満足したら
 龍王渕まで行かないで帰っちゃいました。
 なので写真はナシ。
 まいったねこりゃ。
 龍王渕の情報は「龍王渕 佐久間」で検索。
 
 対岸に着きました。
 吊り橋らしく、ゆらゆら揺れて
 サービス満点です。
 補剛トラスでも付ければ
 揺れない様に出来るんだろうけど、
 やっぱりこれって、揺れる様に造ってある?
 一種のアトラクション的なものでしょうか。

 渡った先にはベンチが1つあるだけでした。
 
 下からも見てみましょう。
 この角度からだと、
 そろばん板の絵がよく分かります。
 まあ、ほとんど剥がれてますけどね…
 長細い橋桁の形に合わせて
 横たわる龍の絵が描いてあったみたい。
 
 対岸の主塔にもレリーフがあります。
 こちらには龍と女性の絵があり、
 向こうには雨乞いする人々の絵です。
 伝説の地だと言うのが実感できる演出だね。
 ああ、それとこの川の流れる谷は、
 中央構造線が浸食されて出来た
 谷だそうですよ。
 佐久間ダム側では白っぽい花崗岩だけど、
 ここは黒っぽい石になってます。

[2011年4月現在]

県道から龍王渕の遊歩道の途中に架かる吊り橋です。
レポート中の伝説の説明が端折りすぎなので、もう少し詳しく紹介します。

その昔、下平の人々は、狭い山間の畑を耕して暮らしていました。
ある年、日照り続きで作物が全滅寸前だったときに、龍王ごんげんに雨乞いをしたのですが、
雨乞いの最後の日にご馳走を作って、龍王ごんげんにおまつりをする為のお椀がありません。
そこで雨乞いと同時に、お椀を貸してくれるようにお祈りをしました。
夜もふけた時、一匹の大蛇が現れ、滝壺の中に消えていきました。
その大蛇が消える寸前、大蛇が美しい女性の姿に変わっていたといいます。
次の日に村人が龍王渕に行ってみると、沢山のお椀やお膳が浮かんでいました。
最後のお祈りが済むと、雨が降り出し、畑の作物も生き返りました。
村人は喜び、龍王ごんげんに借りたお椀でご馳走をいただきました。
その後も、雨乞いの際には、お椀やお膳を借りていたのですが、借りたお椀を壊してしまい、
どんなにお祈りしても、お椀を貸してくれる事は無くなりました。

この話は全国に伝わる「椀貸し伝説」と言われる話のひとつです。
諸国を巡り、ロクロで器を作って商売をしていた「木地師」が伝播の媒体になったと言います。
定住地を持たない、いわゆる漂泊の民でもある木地師集団は、
特殊技能を持っているゆえに、畏怖または忌避される神秘的な存在でもありました。
『十分に進歩した技術は魔法と区別がつかない』と言うわけです。
そういった遠くより来る人々は、「マレビト」とも呼ばれ、被差別階級でもあったのです。
そのような木地師と交易する際に、直接会わないで品物のやり取りをしたのが、
「椀貸し伝説」の元になったと言う説があります。
この龍王渕は秋葉街道に近く、街道を南下した掛川市の桜池にも椀貸し伝説が伝わってるので、
木地師が木を求めて、秋葉街道を移動していった足跡なのかもしれません。


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