【岐阜県・中津川市-中央本線 旧上鐘山トンネル】
中央本線坂下駅から田立駅の間にある古い線路跡。
そこにも現役路線に寄り添うように古いトンネルがあります。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 町中に顔をのぞかせる旧トンネル。
 本当に中央本線には、
 古いトンネルがいっぱい残ってます。
 ここもそのトンネルのひとつです。
 ネットで見付けて気になってたけど、
 ちょっと見て来ました。

 周辺図と断層の話はこちら→■周辺図■

 坂下駅の北側、新旧のトンネルが
 斜面の下に大小2つ並んでます。
 街中の半地下式にして線路を敷いた所なら
 よく見かける景色です。
 (そんなに無いか…)
 で、実はここって大変な場所なのですよ。
 トンネルのあるこの場所には
 「阿寺断層」の断層崖があります。
 この段差は地面がズルズルって
 “ずれた”ために出来たのです。
 そんな所にトンネル造って大丈夫なの?
 いやそんな事より、崖の上の住宅の方は大丈夫?
 
 斜面がちょっと急で降りられないので、
 横の道路から見てみます。
 トンネルの中には干し草の山が・・・
 どこから持ってきた?
 あ。そう言えば、夏になると
 トンネルの前が薮になってるので、
 そこの雑草を刈り取って
 放り込んだんだろうか?
 …って誰が?

 トンネル内部にはレールの補強があります。
 ポータルは石造りですね。
 
 南側の坑口は入れなかったので、
 北側に来ました。
 写真の道は県道6号線です。
 1ケタ県道の割には、狭い所があって
 大きな車じゃ、ちょっと大変かも?
 さて、中央本線の旧線跡はと言うと、
 県道より1段高い所を通ってます。
 県道脇のブロックの法面の上あたり。
 あんな高い場所まで行けないですよ。
 でも心配ありません。
 ちゃんと上に行くための道があります。
 どうやら旧線跡を道路として
 再利用してるらしいです。
 
 線路跡まで上がって来ました。
 なんか林道のよう。
 下に見えてるアスファルトが県道からの道です。
 ちょっと前にスクーターに乗った人が
 この道を走っていった。
 なんだったんだろう。
 さて、そんな事より
 廃トンネルに行きましょう。
 
 廃線跡と言うより、廃道みたいな景色。
 トンネル廃止後は道路として使われてるので
 道路っぽいのはしょうがないでしょう。
 それにここらはイノシシが居るのか、
 イノシシを捕まえるための罠があるって
 看板があったので、
 森の中には入らない方がいいかも?

 トンネルの手前には小さな鉄橋があります。
 しかし、道路として使ってるので、
 問題なく渡れます。
 
 間近で見ると、石造りのポータルが
 何とも重厚です。
 左側のピラスターに「26」の数字があるけど、
 これは名古屋から26番目のトンネルって意味です。
 思えば遠くに来たもんだ。
 いやそんなに遠くないけど…
 トンネルの中にも白い看板があります。
 「坂下宇宙線観測所」の文字が・・・
 ひ…秘密基地ですか?
 そんな訳ありませんね。
 これは宇宙線を観測する施設が
 このトンネルの中にあるからです。
 だから線路跡が道路になってるのです。
 
 あ。こんな所に銘版があった。
 「上鐘山」
 トンネルの名前ですね。
 右上に見える黒い物は、
 観測所に電気を送るための電線みたいです。
 
 中は石と煉瓦で造られてます。
 やはり壁は“すす”で真っ黒。
 下半分が石積みなのは、
 ここに活断層があって地層がもろいので
 頑丈にしなければならないからだろうか?
 おかげでどこも壊れてません。
 でも壊れた軽トラが放置中だ。
 
 すっかりボロボロです。
 荷台には「ムデンアンテナ」
 後ろには「無電テレビ工業株式会社」とある。
 電気店の配達のトラックなのかな?
 まあ、テレビ用のアンテナを作っていた
 会社の物でしょう。
 とは言え、いつからここにあるのだろう。
 観測所が出来た後だよね。
 
 枕木やレールは無いけど、
 バラストが残ってます。
 途中に工事用?のヘルメットが落ちてた。
 ゴミとかも捨ててあったし、
 人が出入りしてたのがわかります。
 あれ? 今でも観測所って
 稼動してるよね?
 
 反対側に抜ける手前で行き止りです。
 ここが例の「坂下宇宙線観測所」です。
 ・・・ドアが開いてる。
 でも人の気配はしないし、
 中は照明も付いてなくて真っ暗です。
 しかもドアの横の電源のスイッチはOFFだ。
 まさかここって、もう使われてない?
 それとも観測器機だけ動いてるのだろうか?
 どうだろうか?
 廃墟のようにも見えるけど、
 事情がわからないので、これにて撤収します。

[2007年1月現在]

「坂下宇宙線観測所」は、名古屋大学による、太陽系の大規模磁場構造を観測するための施設です。
宇宙の深淵より降り注ぐ放射線は、宇宙の磁場により飛来する起源が定かでは無く、
等しく太陽系に降り注いでいると考えられています。
しかし、その宇宙線の飛来方向を精密に測定出来れば、
太陽系の大規模磁場構造が明らかにする事が出来るそうです。
そこで、故・上野裕幸名誉教授により開発された、プラスチックシンチレータを使った大型の観測装置を、
乗鞍の乗鞍宇宙線観測所と名大キャンパス内に、昭和53年には上鐘山トンネルの中に設置しました。
この観測装置を使った20年以上に及ぶ長期計測により、貴重な観測結果を得られたという事です。
この観測施設が現在も稼動しているのか、詳しい事はわかりませんでした。

2010年5月に再び探索しました。今度は観測所の扉の向こうへ・・・
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