【岐阜県・瑞浪市-正馬様トンネル】
岐阜県の瑞浪市は有名な化石産地です。そんな所にある短い隧道。しかしそこには驚愕の事実が…
※発表当時は「化石隧道(仮)」でした。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 地図を見ていて、偶然見付けた隧道。
 山の中に小さく描かれたトンネルの記号のみで、
 偶然でもなけりゃ見付けられません。
 でも、見付けたからには
 行かない訳にはまいりません。
 その小さき隧道の場所はこちら
  →■周辺図■

 まずは県道上から見てみましょう。
 真ん中の山がへこんでいる所に
 例の隧道はあります。
 でも、ど〜〜見ても只の裏山よね。
 ここから眺めて、隧道があるなんて思います?
 思わないよね〜
 左端に細い道が奥に伸びていて、
 この道を行きます。
 途中の分かれ道を右に行き、
 さらに、山に向って細い道を上がって行くけど、
 ここで気を付けないと、道を間違えます。
 うっかりすると人の家の庭先に出ちゃいます。
 
 小さな工場の横から入ります。
 道は森の中に向かって上がっていき、
 本当に大丈夫なのこの道?っていう感じの所を
 少し行くと隧道に到着。
 けっして荒れた道ではないのですが、
 雰囲気的に、この先に何も無いように思える
 そんな道を行きます。

 一瞬、間違えたのかと思っていたら、
 目の前にあれが…
 

 これは!
 想像以上に良い物件です。
 素堀りです。
 しかも、余計な加工はいっさい無し。
 まだこんな隠し玉があったなんて。
 岐阜県あなどりがたしです。
 こんな感じなので、扁額も銘板もありません。
 レポート作る時、名前どうしよう?
 この辺りの地名から付けておこうか?
 まあ、とりあえず、先に隧道を見ましょう。
 ■後に「正馬様トンネル」と判明

 
 中は細かい凸凹が一面にあります。
 ノミで削った跡のようです。
 さぞ時間が掛かった事でしょう。
 そんな事より、何か変な横穴があるけど…
 まさか、中で分岐しているの?
 って思ったけど、
 3mぐらいの奥行きしかなくて、
 しかも、薪が沢山置いてありました。
 …貯蔵庫?
 
 反対側の壁にも同じ様な、
 しかもひと回り大きな穴がありました。
 こちらも大量の薪が積んであります。
 薪の貯蔵庫にしては大袈裟な作りです。
 これ掘るのだってそんな簡単じゃないでしょう?
 隧道の中だけに、真相は闇の中ですね。
 そう言えば、隧道の中は未舗装です。
 隧道の外は舗装された道なので、
 うかつに飛び込むとスリップしかねません。
 慎重に通りましょう。
 
 上を見上げると、何だかいっぱい
 溝が付いてます。
 何これ?
 って思ったけど、
 これって車が付けていったものみたいです。
 たぶん、トラックの荷台の角が
 削っていったんでしょう。
 無茶するなぁ…
 でも、真上に付いた傷はどうやって付いたの?
 ちょっと不思議。
 
 短い隧道なので、もう外です。
 こちらは開けた場所で、明るい雰囲気です。
 この隧道は素堀りのままで、
 コンクリートなどで補強されてません。
 だからといって、固い岩盤じゃなく、
 砂岩やシルト岩・泥岩などの、
 比較的もろい地層に隧道は掘られてます。
 実は、この隧道の手前にある看板を見て
 知ったのですが、
 この辺りでは化石が出るそうです。
 で、隧道の近くを探してみました。
 
 簡単に見付かりましたね。
 これは「ビカリア」という巻貝です。
 2cm程の大きさで、土の中に食い込んでいて、
 たがねでも使わないと外れそうにありません。
 この隧道がある瑞浪市には、
 約2200万年〜1500万年前に堆積した、
 瑞浪層群という地層が広がってます。
 ここは大昔は海だったので、
 貝やサメなどの、海の生き物の化石が出ます。
 この「ビカリア」の他にも、2枚貝の化石も
 沢山ありました。
 
 しかも、隧道の中の壁にも化石はあります。
 まさに「化石隧道」
 そうだ。この隧道は「化石隧道」と名付けよう。
 でもいちおう(仮)という事にして…
 それと、この写真のような丸い石も
 いっぱい顔を出していました。
 これは「ノジュール」という物です。
 化石の周りに色々な成分が集まって、
 こんな丸い石が出来ました。
 もしかして、こういう物があるから
 コンクリートで固めたりしてないのでしょうか?
 
 ここは化石、採り放題だね。
 でも、それはなりません。
 瑞浪市一帯は化石包含地として、
 化石採集が禁止されています。
 先程の隧道の手前にある看板ってのはこれです。
 しかし、この看板がある事で逆に
 ここに化石が出る事をばらしているよね?
 しかも、わざわざ2枚も立ててるし、
 逆効果の様な気が…
 まあ、ここには大した物はなさそうですが、
 隧道に貝という組み合わせは
 なかなか楽しいものがあります。
[2005年6月現在]

化石隧道といえば、瑞浪化石博物館の地下に掘られた地下壕の方が有名?です。
太平洋戦争の時に、航空機製造の疎開工場の為に掘られたトンネルで、
内部はびっしりと貝の化石が付いてます。ここよりすごそうです。

このトンネルを抜けた先には耕作地があり、そこの地名が「正馬様洞」と言うそうです。
今では耕作地も無くなり、何かの施設が建ってます。
後から知ったのですが、この施設、実は「高レベル放射性廃棄物」の地層処分のために
核燃料サイクル機構が地中に穴を掘ってボーリング調査をしていた跡だったのです。
簡単に言えば、この世で最も危険なゴミを、掘った穴に捨てようという訳です。
正馬様洞が、その“核のゴミ捨て場”の候補地だったのです。
狭いトンネルに調査のための機材を通すのに、バラバラにして通したそうです。
トンネルの天井の傷も、その時に付いたものかもしれません。
この狭いトンネルを広げようとしたところ、住民の抵抗にあい、取り付け道路が建設できず、
ここを地層処分の「適地」にする事が出来なかったそうです。
正馬様トンネルが狭かったおかげで、この地が“核のゴミ捨て場”にならずにすんだのです。
しかし、核燃料サイクル機構はこの周辺地域での処分場建設を諦めていないそうです。
高レベル放射性廃棄物地下処分場が出来たらどうなるか?
放射性物質が無害になる何千・何万年もの間、何事も無ければいいのですが、
万が一放射能が漏れだせば、地下水を汚染し、その水が川に流れ込んでしまいます。
ある大学教授によると、その放射能を帯びた地下水は、
南側を流れる土岐川と、北側を流れる木曽川に流れ込む可能性があるそうです。
その場合、下流の濃尾平野で被曝する被災者は何と400万人!
当然強烈な放射能を帯びた水は、伊勢湾にまで流れ込む訳で・・・
と、これは処分場が出来た場合に起こりえる、最悪のシナリオですが、
そんな恐ろしいものが造られず、いつまでも平和な暮らしが続くことを願ってやみません。

正馬様洞の様子。いわくありげな建物が点在してます。
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