【三重県・国道1号線-伊勢大橋】
木曽三川のうちの、揖斐川と長良川に架かる鋼アーチ橋・伊勢大橋。
昭和9年(1934)に造られた、15ものアーチをつらねる、長大な下路ランガートラス橋です。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 昔は車でここを通るたびに、
 アーチを「ひと〜つ、ふた〜つ」と
 数えていたけど、15もあったのですね。
 それに、伊勢大橋は近々
 架け替えられるそうです。
 なので急いで行って来ました。

 まずは地図で位置を確認→■周辺図■

 まずは西側から出発しましょう。
 こっちは揖斐川になります。
 あいも変わらず交通量多めです。
 流石に国道1号線。
 こんなに車が多いので、
 歩道からの取材となります。
 車道の真ん中で写真なんか撮ってたら・・・
 死にますね…( ̄▽ ̄;)

 ちなみに左端の看板に、
 「ながらがわ」とあるのは、
 揖斐川と長良川が一緒なってるからです。
 
 ランガートラス橋と言うだけあって、
 見事にアーチが並んでます。
 橋桁の上にある、斜の鋼材がトラス部分です。
 いわゆる“トラスドランガー”とは別物。
 広い河原なだけあって、
 しばらく橋は水の無い所を行きます。
 そこでちょっと河原に下りて
 橋桁を下側からも見てみましょう。
 
 低っ!
 すごい低さです。
 頭ぶつかります。
 けっこう複雑な構造です。
 こうなってたんだ、裏側って。
 
 支承(ししょう)部分のアップ。
 ピン支承と言われるタイプです。
 思いのほか小さな物です。
 

 では、橋を渡ってみましょう。
 桑名市側から出発して、
 長島町に向って歩いて行きます。
 橋の長さが1km以上あるので、
 途中で写真を撮りながらじゃあ
 結構時間が掛かりそう。

 古い橋だけあって、リベット留めですね。
 この写真の四角い部品は
 「ガセット」と言う物です。
 さびてる。

 
 だいたい半分ぐらいまで来ました。
 あら? こんな所に信号が?
 
 

 実はこの伊勢大橋には、
 途中に堤防道路が繋がっており、
 交差点があります。
 「中堤口交差点」
 ちょっと珍しいですね。
 ここから向こうが「揖斐川」、
 手前側が「長良川」です。

 
 堤防道路からだとこんな感じ。
 橋の横に穴が開いてます。
 この道は三重県・県道106号線です。
 この県道を北に行けば
 木曽三川公園に行けます。

 ちなみにその公園は岐阜県にあって、
 公園内の県道を東西に横切ると、
 1km以内に愛知県・岐阜県・三重県の県境が
 集まってます。
 木曽三川公園のすぐ南が岐阜県最南端で、
 幅が300mぐらいしかありません。
 ・・・まめ知識でした
 
 交差点から木曽三川公園の方向を見てみた。
 遠くの山が養老山地で、
 その手前の橋が近鉄名古屋線の鉄橋です。
 こんな堤防道路を走ったら気持ち良さそう。

 もちろんこの写真は、
 交差点の外の歩道から撮ってますよ。
 
 堤防県道106号線の横から
 何かの道が出てたので行ってみた。
 半地下式で伊勢大橋をくぐって
 南側に出ました。
 車両進入禁止ですね。
 まあ、歩行者や自転車くらいなら大丈夫?
 この先は公園になっていて、
 散策するのにピッタリ。
 
 で、ここでも橋の下を見てみよう。
 これは歩道の裏側です。
 後付けなのか、斜の鋼材で支えてます。
 あんまり頑丈そうじゃないね。
 歩道を歩く際は、
 飛んだり跳ねたりしないようにしよう。
 床の鉄板に穴が開くかも?
 
 アーチとアーチが並んでるので、
 ダブルの支承だ。
 ボルトが4本でしか留まってナイけど、
 アーチ1つで支承が4ケ所なので
 ボルトが16本だけで固定されてるってコト?
 まあ、今まで壊れなかったんだから、
 これで大丈夫なのでしょう。
 けっして“ポキッ”っと
 折れたりしないのでしょう。
 支障はナイってか?( ̄▽ ̄)

 隣に立ってるのは、歩道用の橋脚です。
 
 近くに漁船が置いてありました。
 今でも使ってるのかな?
 何か筒の様な物がたくさん載ってるけど、
 これは蛸壺?
 桑名のこの辺りはタコ漁がさかんらしいので、
 この船もタコ漁の漁船なのでしょう。

 桑名と言えば有名なのがハマグリ。
 「その手は桑名の焼きハマグリ」でお馴染の
 あのハマグリです。
 でも、近年は採れる量が減ったそうな。
 
 再び橋に戻って来ました。
 伊勢大橋の南側には、沢山の丸い物が・・・
 あれが悪名高き「長良川河口堰」です。
 国が建設を強行したため、
 長良川河口のシジミが激減したそうです。
 それに天然アユは絶滅状態だとか・・・
 もはや犯罪的とすら言えますね。
 
 そんなこんなで、1km以上歩いて
 ようやく反対側に到着。
 ここから先は長島町になります。
 次の信号を右折して
 川沿いをずっと走れば
 「ナガシマスパーランド」に行けます。
 絶叫マシンとかがある遊園地ですね。
 遠くからでも「スチールドラゴン2000」と言う
 ジェットコースターが見えます。
 それに温泉もあります。
 “スパー” ですからね。
 
 橋を渡った先に、こんな看板が・・・
 新しい伊勢大橋ってこれ?
 なにこれ?
 こんなツマラナイ橋にしてしまうの?
 いくら通り易い橋になると言っても、
 今の伊勢大橋と引き換えに出来る程の物なの?
 せめて、ニールセンローゼタイプとかには
 出来ないのでしょうか。

 でも、頭の固い役人って、
 いったん決定した事は
 何が何でも強行するのでしょう。
 あの長良川河口堰のように・・・
 
 またひとつ土木遺産が失われます。
 まだ工事は始まっていませんが、
 早いとこ見に行った方がいいでしょう。

 あ。この写真は帰りに
 中堤口交差点を撮ったものです。

[2007年3月現在]

伊勢大橋は、戦前で最も著名な橋梁設計家、増田淳により設計された橋です。
増田淳は、東大土木工学科卒業後アメリカに渡り、15年間設計技術を学びました。
帰国後は東京に設計事務所を開設し、20年間に80もの橋を設計したそうです。
その内のひとつが「伊勢大橋」です。
トラスやアーチ、吊り橋など多彩な種類の橋を設計し、天才的設計技術者と言われていました。
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