【愛知県・犬山市-素堀り隧道】
愛知県犬山市には、国宝・犬山城があります。別名「白亭城」。
その犬山城の天守閣の真下に掘られた、短い素堀り隧道を見てきました。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 愛知県にも、
 まだまだ素堀り隧道がありました。
 でも、こんな所に
 こんな小さな隧道があるなんて
 知らなかったです。
 では行ってみましょう。

 隧道の周辺図はこちらに→■周辺図■

 木曽川に架かる
 「ツインブリッジ」の手前を左折し
 西に600m程行くと・・・
 岩山を貫く“穴”が。
 本当にただの穴です。
 しかも、狭い。
 ああ、でも大丈夫。
 一方通行ですから、対向車はいません。
 道の右側に頑丈なフェンスがあるけど、
 何だろう?
 下をのぞくと何かの施設があった。
 それは後回しにして、まずは隧道ですね。
 
 コンクリートのポータルもない、
 ただの掘りっぱなしの“穴”ですねぇ。
 内部の壁は細かい凹凸でいっぱいです。
 
 犬山から岐阜県の各務原にかけては、
 チャートと言う岩石が広がってますが、
 この山もチャートで出来た岩山です。
 チャートは「放散虫」という
 小さな生物の死骸が積もり積もって出来た
 堆積岩です。
 だから、板をたくさん重ねたようになってます。
 しかも、すごい圧力がかかって
 斜めに傾いてるし。

 そこにトンネルを掘れば、
 こんな感じになるのですね。
 
 短いので、すぐに反対側に出ます。
 こっちにも、地層の褶曲模様が見れます。
 なかなかいいアクセントになってる。
 
 こんな風に。

 何層にも重なったチャートの様子が
 よくわかります。
 チャートは赤茶色をしてるそうだけど、
 黄土色なのは、色でも塗ったからなのかな?
 
 進入禁止の標識が
 これでもかと言わんばかりに…
 向う側はしっとりとした景色なのに、
 こりゃないよ。

 でも、ネタ的にはオッケーかな?
 
 左に視線を移してみれば、木曽川です。
 こんな間近に隧道はあったんですよ。
 でも、木曽川ってこんなに濁っていた?
 実は前日に台風が通過したので、
 木曽川が増水してこんな状態になってます。
 そういえば、この辺りには
 「遣ろか水」なる妖怪がいるそうな。
 大雨の時などに「やろうか、やろうか」と
 大水を出すそうです。
 迷惑ですね。
 それだけ木曽川は氾濫しやすい川なので、
 こんな話が出来たのでしょう。
 ちなみに川の向うは、鵜沼の町並です。
 
 さて、これで隧道のレポートは終わりですが、
 先程のフェンスの向こうにある
 施設を見てみましょう。
 これはかつての名古屋市上水道の取水口跡です。
 大正3年3月完成だそうです。
 煉瓦を積んで、その上をコンクリートで
 固めてあります。
 溝がいくつかありますが、
 仕切りを差し込むための物でしょうか?

 現在はここよりさらに西にある
 ライン大橋の堰から水を取ってます。
[2007年7月現在]

この隧道は、上水道の取水口建設に関係しているそうです。
それとは直接関係無いのですが、興味深い話をひとつ。
木曽川は昔から水害を引き起こしてきましたが、1608年に犬山市から弥富市にかけて木曽川左岸には、
48kmにも及ぶ「御囲堤(おかこいつつみ)」と言われる堤防が造られました。
これは治水のためではなく、名古屋城を防衛するための軍事施設でした。
それゆえ右岸の美濃側には堤防を築く事が許されず、さらに酷い水害を受けました。
犬山市には「遣ろか水」が出現したという記録が残っていて、1687年の事だといいます。
【木曽川が雨で増水した時、美濃鵜沼の淵から「遣ろうか、遣ろうか」と言う声がした。
警戒に出ていた者が、「いこさばいこせ」と叫ぶと、川の水が急に増水して浸水した。】
それにより犬山城下が浸水被害にあったみたいです。
「御囲堤」が出来た事によって、木曽川から農業用水を得ていた村々は
水不足に悩まされたりしたそうです。
藩や役人に対する不満が、「遣ろか水」なる妖怪を生んだのかと想像してしまいます。
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