【国道156号線旧道-平瀬隧道】
岐阜県白川村の旧道にある廃隧道・平瀬隧道。
場所は白川郷と御母衣湖の中間あたり、白弓スキー場の西側にあります。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 白川郷に行くのに2回ほど通ったけど、
 こんな隧道があるなんて
 つい最近まで知らなかった。
 よく見る廃道系サイトで
 レポートを見てびっくり!
 こんなトコロに廃隧道がぁあ!

 さっそく行って来ました。
 国道156号線を北に進み、
 御母衣湖を過ぎて4kmほどで
 新平瀬トンネルに着きます。
 さて、ここで左に分かれるのが旧道です。
 これ、ちょっと旧道に見えないよねぇ。
 トンネルからも離れてるし、
 今まで見事にスルーしてました。
 で、あらためて地図を見ると
 旧道の隧道が載ってるし・・・
  こいつはウッカリだ( ̄▽ ̄)
 

 旧道は広くて走りやすい道でした。
  ここまでは・・・
 道は橋を渡って対岸に行ってしまいます。
 川の向こう側では何かの工事をしてるし、
 白弓スキー場が近くにあるので、
 そのために旧道が整備されてるのでしょう。
  ここまでは・・・

 さて旧道の廃道はと言うと…
 そう、正面の薮ですね。

 
 ここからが国道の旧道の廃道の
 始まりです。
 薮の中にゲートが沈んでます。
 しかし脇が甘い。
 甘いけど、薮は甘くないので、
 雑草を掻き分けて侵入します。
 
 少し薮に埋もれた道を歩くと
 すぐにアスファルトが復活。
 これ、車のワダチ?
 まさか、こんな所に車がくるの?
 まあさすがに古い跡だろうけど。
 ここから振り返って見ると、
 道が薮に埋もれて道が無いように見える。
 それに遠くの帰雲山には、
 帰雲城を葬った崩落跡も見えます。
 

 カーブを曲がると、
 遠くにロックシェードが・・・
 なるほど、これはいい景色だ♪
 それに、崖も危なげでいい感じ。
 いや、崩れてほしいわけじゃないけど、
 この“むき出し感”が良いです。
 岩肌は茶色いけど、
 花崗岩のようです。
 そう言えばここの近くには
 「御母衣断層」が走ってたのでしたね。

 
 ロックシェードは金属製で、
 思いのほか華奢ですね。
 そんなに大きな石が落ちてないので、
 こんな程度でも大丈夫なのでしょう。
 なんて思ったら、
 ロックシェードの内側の崖が
 ごそっと崩れてた。
 よく見ると花崗岩ひびだらけ・・・
 

 ロックシェードを過ぎたら
 またロックシェード。
 今度のはさっきのより長いです。

 それに・・・
 なにか、変な標識が・・・

 
 上からトンネルのイラスト
 [危 険]
 [幅員4.2m]
 <注意 CAUTION>の旧標識
 [なだれ注意]の補助標識
 これは珍しい。っていうか面白いねぇ。
 上のトンネルのイラストなんて、
 遠くからだと蹄鉄に見えなくもない→
 それに正式な標識って
 <CAUTION>だけですよ。
 

 60mぐらいありそう。
 手前側は緑色なのに、
 向こう側は赤色になってますね。
 あ。これはひょっとして
 隧道の入口のあたりを赤い色に塗って、
 ここ、危険な場所ですよ
 って言う意味で赤くしてるのだろうか?
 
脆そうな地質の割には、
 ロックシェードは壊れてません。
 なんて思って
たら、
 天板にへこんだ所が・・・

 
 落石が当たってへっこんだんだね。
 さぞや大きな音がした事でしょう。
 さて、これが廃隧道・平瀬隧道です。
 見るからにヤバげな雰囲気が漂ってます。
 左右から土砂が流れて来てるし、
 道の真ん中に落石がゴロリと…( ̄▽ ̄)
 今、頭上で「ガッーーーーーン」なんて
 音がしたら、死ぬ程びっくりするよ。
 
 坑口のアーチを見ると、
 ばっくり割れてます。
 それに今気がついたんだけど、
 コンクリートを流し込んだ時に付いた
 型枠の跡がいちばん外側まで続いてる。
 こんなのは初めて見た。
 どんだけ飾り気がないのよ。

 
 さあ、中に入ってみましょう。
 ここはトンネルと
ロックシェードが
 交互に並んでるので、
 隧道なのに陽の光が入って来る所があります。
 飯田線の旧線の隧道にも
 こんなのがありましたね。
 ゆるやかな逆S字カーブなのか、
 向こうに見える明るい場所が、
 右にずれてます。オフセットしてます。
 
 ん〜〜… やけに砂が多いなぁ…
 台風とかの時に外から流れ込んだのかな?
 って、ぼっこり穴が!!!
 ギャラクティカマグナムでも
 炸裂したんだろうか?

 冗談はさておき、
 ここから土砂が流れ出たみたいです。
 何でこんなになってるの?
 コンクリの老巧化ってより、
 圧力で変形して壊れたのかしらね。
 
 コンクリートをけちって
 素堀りを部分を残した物はあるけど、
 これは・・・
 岩盤むき出しだ!
 いやそれより
 案外薄いもんだわコンクリの壁。
 固い岩盤なので薄く造ったのが
 裏目に出たワケだ…
 
 ここは横に“窓”が開いていて、
 明るくなってます。
 ちょっと不思議な感じです。
 コンクリのロックシェード
 
“窓”からのぞくと
 荘川がすぐ下に見えます。
 そ・れ・に、
 壁の崩壊も大変な事になってます。
 鉄筋がむき出しになってて、
 垂れ下がってます!
 
 こんな具合に・・・

 コンクリをパリパリ剥がして
 鉄筋だけきれいに残ってる。
 そのうちコンクリが全部剥がれて、
 鉄筋だけが
 路面にころがってる…
 なんて風になりそうだ。
 
 また隧道部分です。
 暗くてよく見えないけど、
 足下がジャリジャリしてる・・・
 もう路面いっぱい土砂だらけ。
 こんなになった原因って、地下水なのかな?
 東海北陸自動車道のトンネル工事の時に、
 ものすごい出水で工事が遅れたそうだけど、
 ここも同じような地質なので、
 崩れた壁から地下水が出て来て
 土砂を押し流してるのかも?
 
 再びロックシェードです。
 ここからはずっとロックシェードです。
 明るくていいですね。
 もう崩れてないかな? って思ったけど、
 まだまだ壁が崩れてた。
 ここでも鉄筋むき出しだし・・・

 おや?
 なんか落ちてる?
 
 これは農機具かしらね?
 どうやら「除草機」のようです。
 それに・・・壁に家型のへこみが・・・
 これって、お地蔵様のほこらなの?
 見ての通り“から”ですが。
 さらに、かなり小さい。
 30cmくらい?
 こんな場所にあるお地蔵様を拝むのって
 けっこう命がけのような気がしますが。
 
 さ〜て、もうそろそろ外に出ます。
 まだ何か落ちてる?
 いや、放置されてるっぽい。
 ドラム缶…火が燃やせるヤツ。
 ねこ車と、あと訳のわからない物。
 以前は軽トラが3台放置されてたそうですが、
 片付けられたのか、もう無かった。
 
 名残惜しいですが、もうお終い。
 …まあ、帰りにもう一度通るのですが…
 旧道はすっかり薮に埋もれてます。
 
 外に出て隧道を見ると、
 隧道本体が岩山から飛び出したような…
 飛び出したってよりは横にくっついてる感じ。
 いやそうじゃなくて、
 ロックシェードが
 隧道みたいな形になってるんだね。
 扁額はつたに隠れてるけど、
 「平瀬隧道 和31年3月竣工
  延長174米、岐阜懸」とあります。
 174m? もう少し長いと感じたけどねぇ。
 
 では、南側のゲートまで行ってみよう。
 雑草の具合がちょうどイイ感じ。
 あまりな激薮じゃうんざりしますしね。

 このアスファルトの所って段差になってる?
 これって、この下の地面が
 沈んでいるって事ですよね?
 そのうちここが崩落して、
 旧道が寸断されてしまうのでしょう・・・
 
 少し離れた所からもう一度撮影。
 なんという廃な景色。
 すばらしい〜( ̄▽ ̄)〜
 遠くにさっきの青いトラス橋と
 
帰雲山の崩壊跡が見えます。
 
 荘川の方をよく見てみれば・・・
 崖に何かコンクリートが・・・
 あれはロックシェードだ!
 たくさんの“窓”が並んでる。
 まるで崖に沿って
 ロックシェードをはめ込んだみたい。
 覆い被さるように生えてる木々が
 さらに廃な雰囲気を盛り上げてます。

 なんですか、ここって見所いっぱいですよ。
 こんなトコロを見逃していたなんて・・・
 
 旧道は左右からの雑草の侵入で
 車1台分の幅だけしか空いてません。
 ススキがいっぱい生えていて、
 秋の風情があります。
 なんでもこのままススキだらけになると
 木が生えだして森になってしまうそうです。

 それに、さっきから白い物が沢山飛んでる。
 白いフワフワで、ススキの種なのかな?
 写真には写らないけど、
 いっぱい漂ってます。
 
 これにて旧道の廃道終了。
 ここにも錆びたゲートがあります。
 まだ先にも旧道が続いてますが、
 こちらと同じような廃な雰囲気。
 向こうの方に見える建物は、
 「ひらせクリーンセンター」だそうです。
 
 旧道の廃道探索は一通り終えました。
 上のゲートと現道の間は
 どうなってんでしょう?
 新平瀬トンネルを抜けて南側の
 分岐点に来ました。
 「ひらせクリーンセンター」のすぐ前です。
 手前に延びる道はクリーンセンターに、
 右に曲がる道が旧道方面の道です。
 この道自体は旧道ではないようです。
 
 工事現場?のような所を過ぎて、
 ダートの小道を下りると
 旧道のアスファルトの道に出ます。
 ここも周りはススキだらけ。
 白い綿毛もフワフワです。

[2008年9月現在]


「平瀬隧道」は、延長177m(扁額では174m)、高さ4.1m、幅4.2m。路面は未舗装だったそうです。
この旧道のある付近は、白川花崗岩や濃飛流紋岩と言われる岩石で構成されています。
花崗岩は風化が進み、流紋岩は貫入岩により剥離しかかるなど、岩盤は全体的に弱くなっています。
東海北陸自動車道の飛騨トンネルの工事の時は、弱い岩盤からの予想を上回る出水のために、
開通が大幅に遅れました。
平瀬隧道でも地下水がたくさん出て、コンクリートを破損させ、土砂を流出させたのかもしれません。

道ネタ「隧道」TOPへ…