【静岡県・浜松市佐久間-原田橋】
原田橋は、静岡県浜松市の天竜区にある佐久間ダムの南にある吊り橋でした。
2015年1月31日に崖が崩れた事により、崩落してしまいました。
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 

 2012年4月に、
 メインケーブルの破断が見付かり
 しばらく通行止めだったりしたけど、
 まさかこんな幕切れになろうとは・・・
 今回は在りし日の原田橋を偲びつつ
 レポートしたいと思います。


 国道473号線に架かる
 大きなトラス補剛の吊り橋。
 じつに立派な橋です。
 この“原田橋”は2代目で、
 初代は木造橋桁の吊り橋でした。
 左の写真は2012年の春に写した物で、
 この1週間後に、
 例のケーブル破断が発覚して
 通行止めになりました。

[2012年4月現在]

 
 1年後に再び訪れました。
 目的は旧・原田橋の旧道に架かる
 2つのコンクリ橋の探索です。
 今回のレポは、その時に撮影した物です。
 原田橋は交通規制で
 片側交互通行になっていて、
 さらに歩行者用スペースが
 バリケードで区切られてます。
 こちらは西側の主塔になります。
 
 親柱の銘板には、
 「昭和卅一年五月竣功」とあります。
 「卅」は「三」の事で31年ですね。
 すっかり汚れてます。
 主塔にも銘板が着いてますよ。
 

 「昭和31年(1956)
 静岡縣建造
 内示(昭和14年)二等橋
 制作 株式会社東京鉄骨橋梁製作所」

 二等橋とは9tまで大丈夫という事です。
 しかし原田橋では、
 通っていいのは8t未満となってます。

 
 メインケーブルは崖の高い所に
 穴をあけて設置してあります。
 これは直接岩盤に繋げてる?
 ここらは固い花崗岩で出来てるので、
 山そのものをアンカレージの
 代わりにしてるのでしょう。
 …まあ、その山が崩れたのですがね。
 
 主塔の北側のこの場所に、
 旧・原田橋への旧道があります。
 今は土砂に埋もれてます。
 再び旧道橋が見に行けるようになるのに
 いったい何年かかるのか…
 

 主塔の上の方を見上げると
 何か機械が付いてます。
 実はこれ、
 ケーブルの様子を監視するカメラです。
 こんなにも万全な体制だったのに、
 橋を壊す事になる崖は
 ノーマークだった訳ですね。 

 

 橋の上から見た西側の主塔。
 通っていい車の重さは8t未満なのに、
 かつては大きなダンプカーが
 ばんばん走ってましたね。

 向かいの崖に張ってあるネットの部分が
 崩落する事になる場所です。
 当時はそんな事、
 想像出来るわけありませんね。

 

 佐久間側の方向。
 さすがに余裕の道幅。
 歩行者と車の通る場所が
 分けられてます。

 
 細かいパーツも見てみましょう。
 けっこうでかいけどね。
 メインケーブルに付く
 ハンガーケーブルです。
 この金属のブロックで、
 6本のケーブルを束ねてます。
 

 それを下から見ると、
 もう1本きれいなケーブルがあります。
 これは、もしもの時の為の
 補強用のケーブルです。
 これで万が一ケーブルが破断しても安心。

 新しい橋が完成するまでは、
 これで行けるはずでした。

[2013年4月現在]

 
 では、もう一度2012年の写真です。
 こちらは東側になります。
 たくさん看板があります。
 デカデカと書いてありますが、
 効果の程はイマイチだったようです。
 だって、ケーブル切れちゃったしね。
 

 画面奥には以前観光道路廃道と
 紹介した道があります。
 さて、例の破断したケーブルは
 手前側の上から4本目のものです。
 あきらかに普通じゃないです。
 ケーブルがほどけてるのが分かります。
 こんな物を何年も見逃してたなんて、
 浜松市の管理は何ていい加減なんでしょ。
[2012年4月現在]


2015年1月31日午後5時10分頃、天竜川右岸の崖が崩落しました。
その下を通る国道473号線は埋まり、原田橋は主塔が倒され、橋桁は天竜川の河原に落ちてしまいました。その際、橋の上に居た天竜土木事務所の職員2人が、落下に巻き込まれ命を落としました。現地では29日頃から小規模な崩落が発生した事により、31日午後から国道を通行止めにして、土木事務所の職員が付近を調査してました。その時には、警備員や新聞記者も橋上に居たそうですが、橋落下の寸前に走って逃げたおかげで無事だったといいます。「ごう音と共に足元に震動が伝わる。渡り切る直前、橋と地面の境目に亀裂が入っているのが目に入り、橋が崩落しつつあることが分かった。橋を渡り切り、後ろを振り返ると、さっきまで自分がいた橋がない。(静岡新聞より引用)」と、恐怖の体験が新聞記事で語られています。
原田橋の橋桁の補剛トラスはねじ曲がり、西側の主塔は川に倒れ込むように崩落しています。
それほどの状態でも、破断している側のケーブルが切れないでいたのは、何とも皮肉な事です。
(後日現場を訪れた際に確認しましたが、破断していたケーブルは切れていました。)

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