【滋賀県・長浜市-阿蘇谷橋】
国道303号線の傍らに架かる廃橋梁、阿蘇谷橋。荒れ果てた橋は旧道の橋なのか?
青字…ラピスのコメント ■黒字…作者のコメント
 
 いつでも出会いは偶然。
 国道を走っていて、何気に横を見たら、
 薮にまみれた橋の、気になる姿が…!
 あれは廃橋梁だ!
 こんな所で廃物件に出会うなんて、
 これも運命? 運命は大袈裟か…
 運命?の廃物件はこちら→■周辺図■

 ここは滋賀県長浜市木之本町。
 左の道は国道303号線。
 前に流れるは杉野川。
 遠くに見えるのは土倉岳か?
 3月でもまだ雪が残ってます。
 さて、今回の廃橋梁ですが、
 画面中央に見える小さな橋です。
 
 橋の近くまで下りて来ました。
 初めて見たのは10月頃で、
 まるで雑草の固まりに見えた。
 一目で橋だってわかったけど、
 雑草の固まりを渡るのは無理なので、
 その時はスルーしました。
 で、冬になったので見に来ると・・・
 案外あっさりした橋ですねぇ。
 でも、きたない…
 いや、古ぼけてる?
 

 橋台あたりをズームイン。
 アーチっぽく見えてたけど、
 強度アップのために幅を広くしたみたい。
 橋の裏を見ると、T字型桁ってやつ?
 意外と新しい橋なのかな?

 まあ、取り敢えず渡ってみよう。

 
 おおっと、親柱が健在だ。
 しかも文字がちゃんと残ってる。
 え〜っと、なになに・・・
 「昭和六年九月成」
 昭和六年!!!
 そんなに古かったの?
 よく見ると丁寧に補修してあります。
 ひょっとしてこの橋、ただ者じゃない?
 まさか国道の旧道なの?
 
 隣の親柱にも立派な字があります。
 「阿蘇谷橋」
 いちばん下の字が見え辛いけど、
 たぶん「橋」の字じゃないかと…
 この親柱は花崗岩で出来てます。
 加工がしやすいからだろうけど、
 これ、手で彫ったんだね。
 
 では渡ってみよう。
 これ本当に橋?ってくらいの雑草。
 雑草の絨毯ですよ。
 夏はどれほどの激薮なのか・・・
 冬にしか渡れない橋なのかも?
 しかも欄干がナイ。
 こんなに危険な状態なのに、
 通行止めじゃ無いのがすごいね。
 
 渡った先にも親柱が健在です。
 でも、字が読めません…
 あ…あ…阿蘇谷…かな?
 「阿蘇谷橋」みたいですね。
 
 隣にの柱には「昭和六年」の文字が。

 よく考えたら、昭和6年の割には、
 まったく飾り気が無いですね。
 国道とかの旧道じゃなくて、
 ただの村はずれの橋なんだろうか?
 どうだろうか?
 
 国道からはスロープになっていて、
 橋まで簡単に行けます。
 橋を渡った先の道を進むと、
 農道のような道に出ます。
 橋を正面から見た画像に写ってる
 ガードレールがその道ですね。
 
 と、まあ雑草橋を渡ってみた訳ですが、
 もうひとつ面白いモノが・・・
 国道脇の斜面の下に杭が並んでました。
 ざっと数えたところ、10本程あります。
 県名の書かれた境界杭ってやつ?
 じゃなくて「道路敷」って書いてある。
 この杭の向こう側が国道なんだ。
 車が通るのは無理そうですが・・・

[2010年3月現在]

この近くには、廃墟マニアや鉱物マニアには有名な「土倉鉱山」があります。
明治40年に、杉野川で鉱石が発見されたのをきっかけに採掘が始まり、
昭和40年の閉山までの間、銅、硫化鉄、少量の金・銀などが産出されました。
大正5年に町境の杉本隧道が出来、馬車によって鉱石が運搬されていました。
昭和5年には、国道303号線の旧道に档鳥坂隧道が竣工し、
昭和6年に杉野村地先に中島南橋、中島北橋、一の瀬橋などが架けられました。
今回の「阿蘇谷橋」もその時に架けられた橋のひとつなのでしょう。
この一連の橋や隧道は、国道303号線の前身、かつての県道丹生木之本線です。
「阿蘇谷橋」を通り、現国道の対岸を行く道こそが、その県道だと思われます。
今では小さな集落しかない場所ですが、鉱山の最盛期には栄え賑わったといいます。
鉱石を満載した馬車や大勢の鉱山労働者などが、この「阿蘇谷橋」を渡ったのでしょうか?
時は過ぎ、かつての栄華が嘘の様に、荒れ果てた姿となってしまいました。
県道はその後、昭和45年に国道に昇格され、岐阜と滋賀を結ぶルートになっています。


土倉鉱山選鉱所跡
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